125日目:狂った錬金術師と猫人。

 神聖歴六一〇二年・月見羊つきみひつじの月第一六日・天気:晴


 昨日あった嫌なことを忘れるために今日は早めにギルドへ来ました。

 うっ……思い出したらまた吐き気が……。

 ……依頼! 依頼を急いで探しましょう! お仕事に没頭するんです!


 討伐系、採取系、護衛任務……また沢山増えてますね……。

 ただ私たちが受注できそうなのはどうしても採取系が中心です。

 やはり船を使えないのが依頼の幅を狭める一番の要因ですね。

 でも、ここを拠点にしないのに操船技術を学んでもが意味がありません。

 

 う~ん……マーガの街に来て今日で二十日ほど。

 そろそろ他の街へ移動する頃合いかもしれませんね。

 元々それほど長く滞在する予定でもありませんでしたし……。

 

 そんなことを考えていると、やっと見つけたにゃ! 狂った錬金術師! という大声がギルド内に響きます。

 ……これはまた穏やかではない単語が聞えてきましたね。

 一体誰のことかと思い周囲を見渡すと、猫人の女性に絡まれるニコさんの姿が。

 近くにいないと思ったらなにをしてるんですか貴女は……。

 

 そう呆れつつも一方的に責められ涙目のニコさんの助けに入ります。

 突然、間に割り込んだ私とノアさんに警戒心を露わにする猫人の女性。

 うん、落ち着いてください。あと、ちょっと移動しましょう。

 ……ここで話し合うとか無理ですから。

 

 どうにか女性を説得して、ギルドの酒場に場所を移します。

 猫人の女性は名前をミアさんと仰るそうです。

 蜂蜜色の短い髪に気の強そうな青い眼。

 頭に生えた猫耳やお尻から伸びる尻尾も勿論、蜂蜜色です。

 暑がりなのか、チューブトップに短パンという割と際どい服装をしています。

 ……スタイルがいいので凄く目に毒です。


 あ、猫人とケット・シーは同じ亜人種ですが全く違う種族なんですよ。

 簡単に説明すると猫人は人の姿に猫耳と尻尾を持つ亜人種で、ケット・シーは直立二足歩行で喋る猫です。


 さて、そのミアさんの怒っている理由は、どうも昨日のお薬が原因のようです。

 なんでも今日、漁に出る前にあの薬を購入し、早速使ってみたらしいです。

 でも、蓋を開けた瞬間あまりの悪臭に小瓶を海へ落としてしまったんだとか。

 すると瞬く間に魚が津波のように押し寄せ、船が壊れて転覆しかけたそうです。

 その後、命からがら帰港してギルドに薬の製造者を教えてもらい、今に至ると。

 

 ……錬金術師ギルド……面倒事を避けるために私たちを売りましたね!?

 ギルドの対応に唖然とする私に、船の責任を取ってほしいにゃ? とミアさん。

 ……それは修理費用を請求してるんですか?

 しかし、その問い掛けにミアさんは首を横に振ると、お金は自分で稼ぐから依頼を紹介してにゃ? 冒険者って儲かるそうじゃないかにゃ? と笑いかけてきます。

 ……えっと、なんか凄く面倒なことに巻き込まれている気がします!


 こうしてなぜか明日からミアさんとお仕事をするはめに……。

 ……街を出るのはもう少し先になりそうです。


 今日の収支

 銀貨: -2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

 ――――――――

 残金:金貨5枚、銀貨38枚、銅貨41枚

 猫銀銭190枚


 <(T◇T)> わけが分かりません……頭痛い。

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