第16話 耳なし芳一
芳一は一心に念仏を唱え続けた。その全身に経文を書き込んで。だが芳一は気付いていなかった。その耳にだけは経文が書かれていない事に。
「おやあ、芳一の姿が見えぬぞ」
暗闇から謎の声が響いた。じわり、じわり、芳一に近付いて来る。
「何だ、耳だけがあるではないか。仕方ない」
そう言うと、鋭い爪の生えた指が、芳一の耳を掴んだ。そして。レロレロレロ。インコが耳をしゃぶっていましたとさ。
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