第22話 人生を変える悪魔 その1



100年前カルデラ城城下町での出来事



町はずれの小さな小屋に一人の男が入る。

「ただいま」

「お帰りなさい。お父さん」


銀色の髪の5歳ほどの少女が男を出迎えた。




「アーシェ、寝てなくて大丈夫なのか?」

「大丈夫、今日は具合がいいから」




「今日も薬を買ってきたから、しっかり飲むんだぞ」

「その薬・・・高いんでしょ?」

父親は申し訳なさそうに振る舞う少女の頭にぽんと手をのせ頭を撫でた。

「子供がそんな心配をするな!」

「ありがとう、お父さん」

アーシェは父親に抱きついた。




私・・・・大人になったら・・・きっとお父さんに恩返しするんだ・・・





$$$$




ロズワード交易都市を光とするなら

隣街のスラム街は闇

ロズワードでの夢をつかみ損ねた者が逝く人生の墓場・・・




もし人生の選択をやり直せるならば・・・





キロ「あのとき、宝物庫の警備でなければ・・・」

使い魔「どうしたんです?」

キロ「俺は悪魔退治なんてしてなかったのに・・・」



キロ「俺は、カルデラ城の警備兵だったんだけど。その日のシフトがたまたま宝物庫で、そこに泥棒が現れて宝を盗まれたんだ。その失態が原因で首に・・・」





キロ「賊はたった一人だった。俺よりも小柄なのにめちゃくちゃ強くて・・・気が付いたら、やられて気絶してたらしい。」





使い魔「カルデラ城・・・・その泥棒って・・・」

キロ「こころあたりでもあるのか?」

使い魔「まさか、そんなはずありません」

キロ「なんか、汗かいてない?」

使い魔(言えない・・・その泥棒が白い剣を盗むために忍び込んだ『天使様』と私だなんて・・・)





キロ「それにしてもお腹が空いたなぁ・・・」

使い魔「私もです・・」

キロ「お前、飯食べるのかよ」

使い魔「食べなくても死にませんが、お腹は空きます。」





周りには、ぽつぽつ、人がいて市場ができていた。

ロズワードが封鎖された際の臨時市場というところだろうか

本当に、ひとは、たくましい生き物である。



少女「あなたたちお腹が空いてるの?このパンをあげる」

いきなり、小さな女の子が近づいてきてパンを突き出した。

キロ「?」

少女「いるの?いらないの?」

使い魔「これは、どうも」

キロ「ありがとう、お嬢ちゃん」



キロと使い魔は渡されたパンを平らげた。




少女「はい、お茶」

使い魔「これは、どうも」

キロ「ありがとう、お嬢ちゃん」




キロと使い魔は出されたお茶を飲んだ。




少女「食べたわね。飲んだわね。じゃあ、今日一日あたしの言うことをなんでも聞くこと。」




キロ「え・・・」

使い魔「こらこら、子どものうちから、ぼったくりみたいなことしては、いけませんよ」

少女「悪いことしてるってわかってる。でも、どうしても、やらなきゃいけないことなの」



しゅんとされてしまってはバツが悪い。



キロ「ほら、まあ、ご飯も食べさせてもらったし、今日一日ぐらい遊んであげるから、使い魔が」

使い魔「キロさんが、遊んでくれますよ、なんたって、無職で、暇でしょうから」

キロ「ひ、暇じゃないし」





少女は自分のことをニアと名乗った。

ニア「あたしのお父さんが行方不明なの、一緒に探すのを手伝って欲しい。」



少女の話によると、

少女の父親バースは突然、行方不明になったらしい

ロズワード郊外のスラム街に行くのを目撃されたらいいが

最近、かなり治安が悪いため

探すこともできないらしい。




スラムへの道にはぽつりぽつりと人がいた。

その多くが浮浪者や貧乏人ばかりであった。

彼らは口々に

「スラムへ行けば、人生を変えることができるらしい」

と話していた。




ニア「お兄さんは何をしているひとなの?」

使い魔「悪魔退治ですよね」

キロ「え・・・まあ」

ニア「悪魔?へぇ・・・悪魔」

ニアは少し困惑気味ではあったが、

ニア「なんだかよくわからないけど、すごいね」

キロ「・・・・ありがと」

キロ(ああ、子どもに気を使われた)




途中、天使がひょっこりあらわれた。

天使「・・・あまり、一般人を連れて歩くのは感心しないわ。」

天使はニアをみてそういった。

相変わらず、三白眼が怖い。。

キロと使い魔はびくびくして固まるばかりであった。



ニア「あ・・あたしは、お父さんを探すのを手伝ってもらってるの」

ニアも少しおびえているようだった。


天使「・・・お父さん・・・」

キロ「?」


天使「・・・・そう、このお兄さんにしっかり守ってもらうのよ・・・・」

天使はそういって、ニアの頭を撫でた。




天使「・・・この先に悪魔がいる・・・」




そう、言って、銀色の髪をなびかせながら、また、ふっと消えてしまった。






ニア「・・・すごく綺麗なお姉ちゃんだったね」


確かに天使の容姿は人間離れしている。

銀色の髪などどこかのおとぎ話の登場人物のようだ。

だからこそ本物の天使であるとキロは勝手に納得していた。

きっと神様が遣わした天使で

人々を苦しめる悪魔を退治する使命を帯びているんだろうな

と勝手に解釈していた。

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