第20話 略奪悪魔 その2
ロズワードの市街地へ近づくと本が悪魔に反応した。
【略奪悪魔】
この世は地位と金と女だと思っている
黒い炎を放ち腕力も強い
豪勢な鎧とマントを身に着けた大男
キロ「やっぱり悪魔がらみだったか・・」
使い魔「白い剣以外、どんな武器も、悪魔に対して無意味ですからね、軍が束になっても勝てません」
キロ「モダン!やっぱり帰った方がいい。」
モダン「今更、何を言ってるんだ。今帰っても懲罰しか待ってないぞ。」
キロ「じゃあせめてこの剣を持って行け。」
キロは白い剣を差し出した。
使い魔「ああ、簡単に譲渡しないでください。」
モダン「・・・なんだそのくたびれた古い剣は、俺にはロズワート軍で使ってる槍と剣があるから別にいらないよ」
モダンはキロの言うことも聞かずずんずん進んでいく。
モダン「なんでついてくるんだよ。一般人は包囲網の外へ出てけ」
キロ「だーかーらー」
モダン「ははーん、まさか、お前も覇王を討伐してそのおこぼれが欲しいだろ?まあ、邪魔にならないようについてこいよ。俺が上層部に出世した暁には小間使いくらいにはしてやるぜ」
キロ「・・・」
市街地を中心部へ向かって進んでいく
石造りの建物は野獣が暴れたかのようにところどころ無残に壊されていた。
誰もいないはずだが、前方に数人の男たちが見えた。
モダン「あれは、服装からしてロズワードの一般市民って感じだな、逃げ遅れたのか?」
モダン「おーい」
モダンが駆け寄ると男たちは形相が変わって、モダンを取り押さえた。
キロも数人の男たちに取り押さえられた。
まるで、こちらが犯罪者のように
キロ「ちょ」
モダン「何するんだよ!!」
「軍の兵士らしき人物を捕えたぞ!!」
「侵入者は、全員、覇王様のところへ、だろ?」
「よし、連れて行こう」
腕を後ろに抑えられながら連行されていく
向かう方向は町の中心部だった。
町の中央の広場に大きな椅子が作られ
2,3mもある大男が座っていた。
左右にはドレスを着た美女をはべらせている。
椅子の周りにはたくさんの金銀財宝が積み上げられていた。
キロとモダンはその男の前に突き飛ばされた。
大男の周囲には、何十人かの武器をもった住人が囲むようにニヤニヤしながら眺めていた。
覇王「面を上げよ」
覇王「ふむ、今日の我が国土への不法侵入者は二人か・・・」
モダンは姿勢を整えて大男を見た。
とても大きく強靭な肉体を持っているように見えた。
モダンの額から汗が零れ落ちた。心拍数も高まっているのを感じた。
モダンの体にはちゃんと鎧があることを確認した。槍も剣も取られていない。
奴は油断しきっている。
覇王「さあ、答えろ、なぜ、我が国土へ侵入した?」
モダン「我が国土だって?笑わせる。ここはロズワード市民の土地だ!!」
キロ(馬鹿・・)
キロは動きかねていた。悪魔にたくさんの人間が協力しているケースが初めてであった。
市民たちの動きがわからない以上迂闊に動けない。
この人数に袋叩きにされたらひとたまりもない。
覇王「それはつい数日前の話だ。今は、この覇王の帝国の領土である。そうだろう誇り高き帝国市民達よ」
「ああ、そうだ!!」
「覇王様!!」
「覇王様!!」
周りの群衆がけたたましい声を上げた。
音が反響し地面が揺れているように感じた。
モダン「俺は、お前を倒し、ロズワードを開放するためにここへ来た。」
「お前みたいな小僧がか」
「ははっは」
数名が乾いた笑い声をあげる。
覇王「黙れ!!」
その一言であたりがシーンと静まりかえった。
覇王「それは誰の命令だ?」
モダン「俺一人の判断だ。お前を倒し、俺はロズワードの英雄になる」
覇王「ふははははは、面白い、真の男とは、誰もが我を崇めるような強さ、地位と、まばゆいばかりの金銀財宝と、この世のすべての美しい女を求めばならん。」
「そうだ」
「そうだ」
「覇王様」
「覇王様」
モダンは覇王をじっと見ていた。
距離は4,5メートル
周囲に気を配ってない。まるで隙だらけ・・・今なら
モダンは槍を構えて覇王のところまで突進し、刃が深く覇王を突き刺した。
「きゃああああああ」
美女たちは驚きおののいた。
覇王「・・・やーらーれーたー」
モダン(・・・・やった・・・俺はやったぞ)
いったん仰向けになったがすぐに立ち上がり
覇王「・・・なんてな」
槍をあっさりと引き抜いた。抜いた後には傷一つない。
モダン「な・・・なんだと」
覇王が手を天にかざすと黒い炎の球が現れ建物に向かって放り投げると石の建物の一部が燃えて崩れ落ちた。
覇王「我には、剣も槍も大砲も効かん!!これこそが、この世のすべてを総べるに値する覇王の力!!」
「覇王様」
「覇王様」
群衆はますますヒートアップして涙を流すものまでいた。
モダンは後ずさりしてその場にヘタレこんだ。
モダン(こんな化け物ありえない・・・どうする?・・・死ぬのか?俺は・・・どうすれば助かる?)
覇王「だが、その度胸、敵にしては天晴である。どうだろう皆の者」
「そうだ」
「そうだ」
覇王「そうだ、この者に褒美をとらそう。」
そういうと覇王は、その場にある金銀財宝をおもむろにつかんでモダンに投げてよこした。
覇王「それを持ちて、帰るがよい、この覇王に手傷を負わせたと報告してな」
モダン(・・・・・)
モダンはきょとんとしていたがすぐに財宝を抱えて一目散に後ろを向いて走り出した。
モダン(やった、これだけあればしばらく遊んで暮らせるぞ、はは、なんだよ、案外どうにかなるもんじゃないか)
覇王はその情けなく逃げる後姿を見て、にたりと笑い。
手に黒い炎の球を召喚して投げつけようとした。
キロ「避けろ!!」
キロは覇王に斬りかかった。
モダンの槍には微動だにしなかったが、キロの剣に対しては、とっさに危機を感じ、かろうじて後ろに飛びのいた。
姿勢が崩れたのか、投げようとした火球はぎりぎりモダンに命中しなかった。
自分のすぐ真横がドロドロに溶けているのをみて
モダンはダンゴ虫のようにその場に丸まった。
モダン「ひ、やめて、やめて」
キロ(浅い・・・)
白い剣が魔力を吸っている。
傷が浅いのか覇王から噴き出る黒い煙が少しであった。
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