第4話 特別であるという事の理解は難しいよね side飯塚真琴
一組に入った時、今年も色々面倒だなと思ったのは仕方がないと思う。
男子が3名。
他はすべて女子だ。
廊下から二番目の一番後ろの席だったことだけが、唯一の救いだろうか。
窓際だと逃げるのも大変だ。
一階だと窓から逃げるのはやぶさかではないけれど、ここは三階だ。
ふと廊下側の隣の席の子に視線をやると、ぼくの隣だというのにこちらに意識を向けていないことに気付いた。
見かけたことがないから他校からの受験生だと分かったけれど。
彼女は教室内にいる女子のぼくへの視線にも気付いていないようで、何だかとても嬉しくなって思わず声をかけてしまった。
正面から微笑んで見せても、うっとりしない。
これは益々手放せない。
まともな話ができそうだ。
ようやく視線があったので挨拶をした。ぼくから挨拶をするのは何年ぶりだろうか。
「
少し驚いた表情をしたものの、微笑みかえしてくれた。
「よろしくお願いします。私は
「ヒナタ? 可愛い名前だね。一組にピッタリな名前だ。高等部からだよね?」
ほっとするような笑みだった。陽だまりのような笑顔。
「はい」
「このクラスで他校からの受験で入ったのは君だけだよ。分からないことがあったら何でも聞いてね」
「ありがとうございます」
そこまで話したところで、初対面なのに少し慣れ慣れすぎたかな? とも思った。
「……ぼくの口調変じゃない?」
そういうとキョトンとした顔をした後、笑ってくれた。
「中学の友人に似たような子がいましたから慣れていますよ?」
ぼくみたいな女子がいたのか? それはそれでちょっと会ってみたい気がした。
「そう? 良かった。できれば、普通に話さない? 同い年なんだしさ」
「は……あっと、うん」
少し、はにかんだ感じがとても可愛くてギュッと抱きしめたい気持ちをこらえた。
こんななりだから、ぼくが可愛い物が好きだというのは知られていない。
知っているのは従姉妹ぐらいだ。
陽向にだったら教えてもいいかな。
あぁー、色々話がしたい!
食事に誘おうかな。
断られたらどうしよう。
「今日このあと用事あるかな?」
「あ、えーと。家族と食事に行きま……行くよ」
言いなおして、はにかむ。
くぅ、可愛い。
なんだこの笑顔の破壊力。
「あぁ、そうか。…………それじゃ明日一緒にお昼食べない?」
このセリフを言うのにちょっとした勇気がいった。
二度目も断られると衝撃が半端ないと思う。
「うん」
「良かった!」
断られるかもしれないと思ったので少しほっとした。
そして、今まで断ってきた女子たちに申し訳なかったかなとも思った。
今のぼくみたいに、きっと勇気を振り絞って言ったのだろうから。
これからはもう少し優しくしよう。
そんな決意をした日だった。
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