第80話:「まささん、アナリストになる」の巻

(久しぶりに興が乗ったものか、アナリストまささんが顔を出し始めます)


「日本や西欧と中韓の違いはな、ぶっちゃけ言うと『御恩と奉公』のあるなしに尽きるんだ」


「『御恩と奉公』ねェ」


「あちらさんは封建時代を経験してないだろ? だから、利害の絡む対人関係に『対等』という概念が希薄なんだな。代わりにあるのは『上下』の関係。なもんだから、中韓の連中は、取り引きじゃなくいつだって駆け引きしようとするわけだ」


「よくわからん。もちっとわかりやすく説明してくれんか?」


「そうだな……たとえばこうだ。利害関係の絡む相手との対等なお付き合いというのは、値札の付いた商品を客が買うって関係だ。高いと思ったら客は買わないし、安いと思ったら客は買う。売る側は、客に安いと思わせつつ自分が利益を得るような値段を付ける。基本、狙うのはWIN-WINの関係だ」


「ふむ」


「で、上下なお付き合いという奴は、職人にものを作らせ、その完成品を買い取るみたいなシステムだ。ギャラは成果報酬だから、上の判断ひとつでどれだけでも上下する。下はそれでも仕事をしないと食えないから、赤字になっても引き受けないといけない場合がたまにある。要するに、上が美味しいところを総取りする、雇い・雇われの関係だ」


「なるほど」


「対等なお付き合いの場合、客に『俺の商品を買え』と強制はできないから、初めから利で釣るしか方法がない。もちろん、不義理を果たせば客は飛ぶ。そうなったら自分のほうが不利益被るから、ながくつきあいやっていきたかったら誠実にやるしかない。だから利害のすりあわせは一方的なものにはならず、大概は相手の理解を必要とする。要するに取引だ」


「後者の場合は?」


「上下のお付き合いの場合、相手に仕事を強要させられる限り自分の利益は動かない。無茶もできる。だから、仕事をするほうは自衛のため手の内は見せない。不義理を果たす可能性をちらつかせて、相手からの譲歩を引き出そうとする。そうさせないよう、雇い側も『俺に雇われといたほうがいいぞ』と甘言を弄して雇われ側を引き留めようと図る。駆け引きだ」

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