2014年以前
122期 大切な気持ち
そんな気持ち。私には持ち合わせてないのだと思っていた。この17年間ずっと。そうではないのだと気が付いたのはいつだったか。今日のような気もするし、数ヵ月も前だったような気がする。
高2から、進路に合わせた選択授業が始まる。2クラス合同で行われる選択授業で、私は隣のクラスの彼と同じ授業を受けることになった。
私にとっての始まりは、些細なことだ。気が付くと彼はいつも私の隣の席に座っていて、ただ黙々と黒板を写していた。その彼の横顔に、私は心惹かれた。
ある日、彼から声をかけられた。当然の如く隣の席に座っている彼。なんでも、今日出た宿題でわからないところがあるから教えて欲しい、というのだ。そんなの、彼の友達に聞けばいいのに、とその時不思議に思いながらも、放課後の図書室で彼とふたり勉強した。
それがきっかけで、彼と一緒の時間が増えた。
放課後、図書室で勉強をして、駅までの道を話しながら帰った。彼といる時間はドキドキした。そして、同じくらいモヤモヤした気持ちが私を包み込んだ。
彼と別れた後のさみしい気持ち。会えないときの、ザワザワした気持ち。
もしかして、私、彼のことが好きになった? そんな気持ち、持ち合わせていないのだと思った。この17年間、そんなことなかったから。
あれから、10年。
私は彼と結婚した。今思えば、私は彼の策略にはまったのだ。ずっと隣の席にいて、ずっとタイミングを計っていたのだ。
でも、その策略がなかったら、私はきっと人を好きになる気持ちは思い出さなかったと思う。
大切な気持ちを思い出させてくれた、大切な彼に、ありがとう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます