149期 愛か、それとも、……

初めて彼氏ができた。だから、手作りチョコレートを渡そうと思った。


雪国育ちの私は室温10度でもさして寒いと思いもせず、トリュフチョコレートキットのパッケージを開けて作り始めた。

チューブに入ったチョコレートを湯煎でとかし、食品用ラップフィルムの上に6等分に絞り出した。6つめを絞り出しているときには、1つめは既に固まっていた。

固まっている1つめのチョコレートを手袋をはめた手に取り、丸める。が、チョコレートはボロボロに崩れるだけで一向にまとまる気配がない。

そう、寒い部屋で冷え症の私。とても掌がチョコレートを柔らかくするだけの温度にはなっていなかったのだ。そのことには気が付かないが、チョコレートがまとまらないという事実はわかった。

私は食品用ラップフィルムの上に出したチョコレートを回収し、再び湯煎にかけた。

チョコレートを溶かしている間、考えた。もう一度同じことをしても、結果は見えている。

最終形態から察するに、そこそこ丸くて、表面にシュガーパウダーやナッツ類などが付いてデコレーションできていればよいのだ。ただ、表面にナッツ類のようなものをつけるためには、やはり表面がある程度溶けている必要がある。

手袋をはめた手でチョコレートを丸めても、表面が適度に溶けている、という状態にはならなかった。手袋をしていては、自分の掌の温度がチョコレートには伝わらないのではないか。そう思って、私は丸く固まったチョコレートを直に掌で丸め始めた。


出来上がったトリュフチョコレートの見栄えは悪くない。白とピンクのシュガーパウダーとココナッツパウダー、クラッチナッツ。普通においしそうに見える。あとはラッピングをして、渡すだけだ。が、私には気になることがあった。作っている最中、気になって仕方がなかった。

これは、本当に食べても大丈夫なのだろうか?

出来上がったチョコレートに詰まっているモノは、愛か、それとも、手垢か……。

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