森の、どーぶつさんたち。

竜堂 嵐

お腹をすかせた狼さんと一人ぼっちの子兎さん1

 注意書き:ナレーションのお姉さま(またはお兄さま)になりきって

        だんだんテンション上げながら、お読み下さい。


 ここは空から見るとイチゴ形したイースト・ストロベリーというクニの、空から見たらシュークリーム形をした、シュ・ア・ラ・クレムの森の南南西にあるお池。

 通称『森のお池(まんまですね)』です(ながっ)。


 春も近づいた三月のあるうららかな木曜日。


 青い毛並みの狼を人間にしてみて耳と尻尾を生やしたらこんな感じかな? という感じの平々凡々なひとりの青年。すなわち男オオカミが釣りをしており、彼はふとこんなことを考えました。


(腹、減ったな)

 

 わけもなく考えたわけじゃありません。

 本当にお腹がすいたから、考えたのです。というわけで男オオカミは考えました。

 晩メシのことを。


(久々に……ウサギが食いたい)

 

 兎ではなく、ウサギ。

 しっかり発達した後ろ足で元気に跳ねまわる兎ではなく、どちらかというと未発達。ちょこちょこしていて、できれば小さいの。

 そう! 一口で『あーんぐり』、いけるやつ。

 首をちょいとつかんで、インマウス。

 口いっぱいそいつをほおばって、もごもごと味わう。

 で、ばりばり骨ごとかみ砕きながら、血と肉と骨、三つが奏でるシンフォニーを楽しむ……考えただけでよだれが出そうです。


 で、考えると余計にお腹がすいてきました。


 お池に垂らしたうきには、何の変化もございやせん。

 あいかわらず、ぷっくりぷっくり浮いたままです。

 というかウサギのことが頭に浮かんだ今となっては、バカらしくて、まぬけなお魚なんぞ、とてもとても待ってはいられません。


(やっぱ、ウサギウサギ、ウサちゃんだよ!)

 

 思うが早いか、男オオカミは釣竿を放り出しました。


◇◆◇◆


 一方、そのころ。

『森のお池』からちょっと北北東にあがって、ちょこっと横道にそれたところ。

 番地はありませんが、とにかくそういう感じの場所に、ちょっと平べったい形の、茶色の屋根に白い壁のお家が一軒ありまして。

 そこには、白い毛並みの雌狼を人間にしてみたらこんな感じかな? というまあまあ美人の女性。すなわち、女オオカミがおりまして。彼女はいま、こんなことを考えておりました。


(お腹すいたのよねえ)


 わけもなく考えたわけじゃありません。

 本当にお腹がすいたから、そう考えたのです。

 ただ、前述の男オオカミとは違い、こちらはとっても居心地のいいお家の中で考えていました。

 ぴかぴかに磨かれたテーブル。白い陶器の花瓶に生けられているのは、ピンクのバラ。

 BGMにはヴィヴァルディの春が流れていそうな、お掃除の行き届いたお部屋でバラの香りに優雅に包まれながら、女おおかみは考え続けます。

(ミートパイもあるし、ケーキも焼いた。食べ物ならたくさんある……)


 しかぁし! いま食べたいものは、そんなものではぬあああい!

 

 それはなにかと尋ねたら。

 あ、ウサちゃんウサちゃん、ウサちゃんちゃん♪

 そう、ずばり、ウサギさんです。

 兎ではなく、ウサギ。

 しっかり発達した後ろ足で元気に……ん? これ、どっかでやった? ま、いっか。童話に反復はつきものですしね(『これ、童話じゃねーよ』というつっこみは、一切受け付けておりません。悪しからずご了承下さい)。


 話がそれましたが、そう! とにかく、ウサギなんです。

 貯蔵された食料がなんだ! ベジタブルライフがどうした!

 狼たるもの、肉を食べなくては!

 思い立ったが吉日(?)。

 女おおかみはご近所に住む、女の子うさぎのお家に向かいましたとさ。

 めでたしめでたし。


(まだまだ続きます。ここで読むのやめるとか、絶対やめて下さいね)

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