てげてげ村便り

村長

第1号『プレゼント』

キンタマを貰った。


はやる気持ちを抑えながら駆け足で家へと急ぐ。

一生手に入らないだろうと思っていたものが

今、私の腕の中にある。

これはもう私のキンタマだ。


「おじさんにはもう必要のないものだから」

そう言っておもむろに私にキンタマを差し出したおじさんは

静かに息を引き取った。


ありがとう、おじさん。

おじさんのキンタマは私のキンタマ。

私のキンタマはおじさんのキンタマ。


こんな風にしてキンタマは貨幣市場のように

世の中を巡り巡っていくんだね。


キンタマ。

なんていい響きなんだろう。


稚拙なようで下品なようで

でもどことなく気品をたずさえている。


ふぐり、陰嚢いんのう、おいなりさん。

呼び方はいろいろあるけれど


私はやっぱりキンタマが一番好き。


ううん、本当は呼び方なんてどうだっていいの。

だって

キンタマはキンタマなんだから。


景色がいつもと違って見える。

キンタマひとつあるだけで

こうも世界が美しいなんて。


ちがうね、ふたつだね。


ああ、なんて素晴らしい気分だろう。


今はただ、この喜びを誰かと分かち合いたい。


フフッ、家に帰ったらまずだれに言おう。


お母さんびっくりするだろうな

いつも生意気な弟に見せて、見返してやるのもいいな


でも


やっぱりいちばんはハムちゃんかな


私のいちばんの親友

この世でいちばんのハムスター


種類はもちろん…











キンクマ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る