人間転生

伊勢崎

第1話 人間転生転換期2

 桃色ブリーフを履き、全世界に向かって踊りながら釈明する男の姿があった。


「違うのです、私は一切不正など働いていない! 誰かが私の工場に侵入し、勝手にダミーロイドを作って貶めたのです! 一度だって、自分が作ったダミーロイドに投票させたことなどありません!」


 その訴えの何と力なきことか! 民衆の中で結成された投票警察たちは憤り、画面に向かって石を投げた。


「なんと白々しい真似を」

「底なしの阿呆ではないか! そのような言い訳を誰が信じよう!」

「自らの傷口に塩を塗りこむなど、理解出来ぬ!」


 ヒートアップしていく投票警察たちの声は遠くまで響き渡り、家でゆったりと寝入っていた男の耳にまで届いた。

 

 ――何の騒ぎだ?


 男は疑問を抱いてパソコンをつける。彼が一番目にチェックするのは決まって一つのサイトだった。この世界において、あれほどに民衆が熱狂するのはアレに関すること以外にないのだ。


 見にくいサイトには自らの売りを綴ったキャッチコピーが毒々しい色でちりばめられている。毎度思うのだが、このサイトはなぜこのように見にくいのだ、と軽く頭痛を覚える。候補者の名以上に目立つキャッチコピーなど、いったい誰が得するものか。


「おや?」


 しかし、その頭痛はすぐに吹き飛んだ。

 昨夜まで、ランキングの上位にいた人間の一部がいなくなっていたのだ。

 すぐに情報を集めるためにインターネットの海を走る。どうやら、一部の不正を行っていたものが候補者の権利を失ったようだった。

 

 ――阿呆どもめ、同一ラインで行うからばれるのだ。


 男は内心でいなくなったライバルたちをせせら笑い、すがすがしい気持ちで席を立った。

 男のパソコンには人間転生候補者ランキング、という名のサイトが映し出されていた。

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