第1クール・裏設定

◆第一段階の秘密◆


 聖杯

鎌倉の街には聖杯伝説で有名な聖杯のオリジナルが隠されている。

聖杯とは、死者復活を含むあらゆる願いをかなえる究極の願望機とされ、その正体は諸説ある。鎌倉に隠されているものは本物の願望機であり、DX2で嵯峨童子が探し求めている聖杯は、まさしくこれのことである。

聖杯は源頼朝が伊豆国に流されていたときに発見したもので、頼朝はこの力を使い、当時神のごとく権勢を誇っていた平家を滅ぼし、源氏による鎌倉幕府を成立させた。

なお、オリジナルの聖杯を隠すため、鎌倉の寺社仏閣には、ダミーとして様々な「聖杯」が所蔵されている。鎌倉幕府は聖杯を奪われないよう隠すため、当時の権力者たちに競って寺社仏閣を建立させ、「聖杯」のダミーとなる、法力(要するに魔力)を秘めた品物をあちこちに所蔵するように仕向けたのだ。

しかし、この方針は当時の権力者たちの権力闘争の過熱を引き起こし、現在の混沌とした霊的バランスを生み出してしまったという大誤算を起こしている。


 ヤマタノオロチの象徴

鎌倉の街は、7つの切り通しを蛇の頭に見立てた、ヤマタノオロチを象徴とした地勢をもっている。これは、ヤマタノオロチの不死性にならい、鎌倉時代に幕府の繁栄を意図して作られた大規模儀式魔法である。実際、源氏が滅んでも、鎌倉幕府が滅んでも、さらに室町幕府が滅んでも、鎌倉の街は不死鳥のごとく甦り、現在も観光都市として栄えている。

この「滅びと再生」による繁栄は、ヤマタノオロチの持つ「蛇」という属性による。即ち、蛇とは脱皮する性質から、古来「死と再生」による永遠を象徴するものであり、鎌倉の街も同様に運命づけられたためだ。鎌倉幕府にとっての誤算は、単純にヤマタノオロチを繁栄の象徴として見ていたために、「繁栄」のためには「死」を必ず経由するという運命に気づかなかったことだろう。

なお、ヤマタノオロチの頭は8個あり、7つの切り通しでは1個頭が足りないがこれは心臓に直結する最も重要な頭(道)が公にされておらず、隠されているためである。(余談ではあるが、鎌倉魍魎戦記1で「切り通しの鬼」が鎌倉を支配するために切り通しを抑えたのは、鎌倉を支配するにはヤマタノオロチの頭を押さえる必要があったためである。)


 人魚の存在

相模湾には、本物の人魚が生息している。世界結界が世界を覆っている現在、彼女たちは大きく数を減らしているが、鎌倉探題と秘密裏に協力関係を結び、相模湾内でのエミュレイター討伐に努めている。

彼女たちは貴重な水中戦力として、時折鎌倉や相模湾で目撃される、深き者どもの駆除をおもな任務としている。


◆第2段階の秘密(秘奥)◆


 沈むルルイエ

相模湾の海底には、死せる神が夢見ながら待ち続けているといわれる、ルルイエの都が沈んでいる。聖杯は、この都を封じるための重要なキーアイテムである。ここに至る秘密の道こそ、ヤマタノオロチの最後の首である。

この秘密の道は、浄妙寺に隠されている。このお寺は「鎌倉」の地名の源となった伝説があったり、また北条政子が軸を奉納したり、彼女の像が奉納されたりと、何かと鎌倉探題とは縁が深い。これは鎌倉探題が特にこのお寺を重視し、その封印のために多大な援助をしたことの現れである。

なお、シナリオ「鎌倉魍魎戦記2」で登場した足利直義の刀も、この秘密の道を封印するための要の一つである。


 アマツカミ

タカマガハラから降り立った神々であるアマツカミとは、侵魔である。

かつての古代神戦争で超至高神側に敗れた古代神は、ファー・ジ・アースの裏界に封じられ、侵魔となった。その侵魔の一派、アマツカミと呼ばれる神々が拠点として狭界に作り上げた小世界がタカマガハラであり、天孫降臨とは、アマツカミによる、表界の侵略戦争である。この時、当時のファー・ジ・アースの守護者側に属する守護天使やウィザード達は、クニツカミとしてアマツカミやその尖兵と戦った。その経緯や伝承については、古事記や日本書紀に詳しい。つまり、天孫ニニギ神の末裔である天皇家は、本来は侵魔の係累に属するものである。現在もそれが続いているかは、定かではないが・・・。

なお、タカマガハラには現在「紅き鍵」による封印(旧版ナイトウィザード向けのシナリオ『紅き鍵の継承者』参照)が施されているため、封印を逃れたわずかな数のアマツカミ以外が、表界に仇為すことは、基本的にはない。

天皇を中心とした勢力と、土着の民や武士との勢力争い、侵略と抵抗の戦いの背後には、こうした侵魔と守護者達との戦いもあったのである。とはいえ、実際に戦っていた武士や皇族、公家といった人間達は、そういった侵魔や守護者達の存在などほとんど知らず、それぞれの目的のために戦っていた。ある意味、これらの闘いや勢力の趨勢は、神々の代理戦争だったとも言えるだろう。武士の台頭による鎌倉幕府の成立は、長く劣勢に立たされてきたクニツカミ側の勝利宣言でもあったのだ。


 アメノムラクモノツルギ

相模湾の海底には、アメノムラクモノツルギが、ルルイエの封印のもう一つのキーとして眠っている。これは、壇ノ浦の合戦で安徳天皇と一緒に海中に没したものを、鎌倉探題がひそかに回収したものである。

その正体は、第八世界ファー・ジ・アースの管理神である幻夢神の分霊であり、幻夢神と別個にして同一の神格である。かつて、アマツカミ(つまりは侵魔)でありながら、タカマガハラに反逆して守護者側についた英雄神スサノヲが、その功績を認められ、正式に第八世界の守護者として任じられた際に、与えられた、『幻夢神の持つ武力』の象徴である。

永い時の間にスサノヲの手を離れ、表舞台から姿を消したアメノムラクモノツルギは、紆余曲折を経て、現在はヤマタノオロチを繋ぎ止める杭として、相模湾の海底でオロチの尾を繋ぎ止める役割を果たしている。


 鶴岡八幡宮の大銀杏

鶴岡八幡宮のご神木として有名な大銀杏は、相模湾に沈んだアメノムラクモノツルギを護り、同時に『聖杯』による封印術式の要である。これは、アメノムラクモノツルギを『収める』事によって封じる『鞘』の機能を持っている。この銀杏がどっしりと大地に根を下ろしている限り、アメノムラクモノツルギの封印が解かれることはないだろう。

数百年に渡り、封印を護り、また長らく人々に愛されていた大銀杏だが、2010年3月10日、午前4時40分頃に、強風のために倒れてしまった。これは、シナリオ「鎌倉魍魎戦記4」の事件で一時的に封印が弱体化した影響により、要である大銀杏に大きな負担がかかったためでもある。

要である大銀杏を失い、鎌倉を覆う聖杯の封印は大きなダメージを受けた。現在は、とても危険な状態といえるだろう。


 クサナギノツルギ

クサナギノツルギは、かつてアマツカミがその力を利用しようとして冥界から召喚した冥魔、ヤマトタケルノミコトが持っていた剣である。そのひと振りは数多の神々を切り飛ばし、草を薙げば風を巻き起こし、煉獄の猛火をも跳ね返したという、恐るべき神通力を秘めたアーティファクトである。

幾多の戦いの末、ヤマトタケルノミコトがクニツカミに敗れた際、偶然か必然か、ヤマトタケルの手を離れていたクサナギノツルギは、やがて熱田神宮に祭られ、天皇家の持つ三種の神器の一つとして、崇められるようになった。


 転生者・源義経

源義経は、ヤマトタケルノミコトの転生者である。義経が幼い頃にそれを察知した守護者達は、彼が冥魔として覚醒するのを防ぐため、鞍馬山での修行を通じて、義経を真っ当なウィザードに育て上げた。そして義経は武士として働き、源氏の再興と平家の滅亡を成し遂げるに至った。

しかし、この戦いの中で、義経がヤマトタケルノミコトの転生者であることを察知した侵魔側は、彼に対して『ダークサイドへの誘惑』を巧みに仕掛け始めた。いくら戦功を上げても評価されない現実に苛立ちを募らせていた義経は、徐々にこの誘惑に屈し、壇ノ浦の合戦の頃には、密かに悪しきウィザードに堕ちていた。復讐のため、そして己の支配欲のため、ただひたすら『力』を求めるエミュレイターに成り果てていたのである。

自らが手にするべき遺産、クサナギノツルギを手に入れ、神すら組み伏せる力を持つ、完全なる冥魔として覚醒する野望に燃える義経。彼は、独断専行で性急に軍を進め、遂に壇ノ浦にて、後一歩でクサナギノツルギに手が届く所まで迫ることとなった。

しかし、この事態を世界滅亡の危機と判断した守護者達は、人間達の争いに介入することを決定。頼朝の妻であり、後に『尼将軍』とまで呼ばれることになる、北条政子に啓示を与えることにした。

世界の真実と、世界が直面している滅亡の危機を知り、守護者達の要請を受けた北条政子は、人魚達の協力を得て、壇ノ浦の海底に沈んだクサナギノツルギを密かに回収、封印することに成功した。

自らの力の象徴を手にすることが出来なかった義経は、やがて失脚し、奥州にて非業の最期を遂げたのだった。いつか、再び復活し、クサナギノツルギを手にするという、恐るべき妄執を抱きながら。


 ルルイエ(クトゥルフ)の封印

ルルイエは、アメノムラクモノツルギと、聖杯という、二重の封印で守られている。

まず、ルルイエを相模湾の海底で直接封じているのはアメノムラクモノツルギである。これは、「水」を象徴する邪神クトゥルフを、対立する神であるハスターが象徴する「風」をもって封じるという意味がある。「剣」とはアルカナにおいて「風」を象徴するからだ。

さらに、この「剣」にアメノムラクモノツルギという霊験あらたかな神器を使用し、その上でヤマタノオロチの尾にあたる相模湾に沈めることで、アメノムラクモノツルギに原点回帰を促し、その霊験を最大限に引き出すことで強力な封印を形成している。

実は鎌倉にヤマタノオロチの地勢を持たせるように鎌倉幕府を動かしたのは、当時の将軍の妻であった北条政子である。ウィザードであった彼女の真の目的は、幕府の繁栄ではなく、ルルイエの封印にあったと言えるだろう。

聖杯は、この封印の上から、アメノムラクモノツルギを封じる役目を持っている。アルカナにおいて「水」を象徴する「杯」である聖杯の力は、同じく「水」の邪神であるクトゥルフの力でさらに増強され、強力にアメノムラクモノツルギを封印している。すなわち、ルルイエの封印はクトゥルフの力を逆用した聖杯によって、クトゥルフの封印であるアメノムラクモノツルギを守るという、再帰構造になっている。万一クトゥルフが活性化した場合でも、その分聖杯が強力になるので、連鎖して封印全体が強化されるという、非常に完成されたものになっている。それこそ、神の力をもってしても、この封印を破るのは容易ではない。

この封印の維持、管理も、鎌倉探題の重要な使命である。


 深きものどもの目的

深きものどもは、冥魔である。彼らはクトゥルフを復活させる方法を探るため、相模湾を含む太平洋を徘徊している。


 江ノ島の秘密

江ノ島とは、すなわち霧の島、魔女たちの住まう理想郷アヴァロンである。ここには人の姿に身を変えた人魚たちが住み、江ノ島弁財天を拠点に活動している。アーサー王伝説にある魔女モルガンとは、すなわち人の姿を取った人魚たちのことである。彼女たちは同時に、「聖杯」の本物を守護する使命を帯びている。

聖杯は江ノ島に隠されているのだ。


 北条まさこの正体

北条まさこは、あの有名な尼将軍、北条政子その人である。

彼女はルルイエの封印がまだ不完全だったころ、TISより相模湾に隠されたルルイエの存在を知らされ、その封印を託された。以来、彼女は世界を守るため、ルルイエに強力な封印を施すことに心血を注いだ。

幸運なことに、彼女の手元には封印に必要な、強力なアーティファクトがそろっていた。やがてすべての封印が形作られた時、彼女はこの封印を永遠に見守り続けるべく人魚に接触し、人魚の肉を食して不老不死となった。

彼女は鎌倉探題を組織し、また人魚たちと協力しながら封印の維持管理に努めている。


◆第3段階の秘密(最秘奥)◆


 クトゥルフの正体

クトゥルフとは、夢見る神と伝承される。これはファー・ジ・アースの守護神、幻夢神と重なる。

実はクトゥルフとは、幻夢神の荒魂ともいえる存在であり、幻夢神と同一視できる神格である。

はるかな太古、冥界に堕ちた冥魔達は、古代神によって堕落したラース・フェリアの守護者エルオースに倣い、幻夢神を堕落させようと試みた(具体的な手段に関しては、『アメノムラクモノツルギとクサナギノツルギの関係』の項を参照のこと)。このときに生まれてしまったのが、クトゥルフという神格である。もし、万が一幻夢神がクトゥルフとして目覚めてしまった場合、幻夢神は神としての属性を宿した冥魔、すなわち冥魔神となってしまう。その目覚めによってもたらされるものは、「夢」であるファー・ジ・アースが滅びるだけに留まらない。幻夢神が神としての属性を宿した冥魔となってしまえば、天界の門が幻夢神によって開かれてしまう。つまり、冥魔はフリーパスで天界へと攻め込むことができてしまうのだ。これはラース=フェリアの例を持ち出すまでもなく、直接的に宇宙滅亡の危機が訪れることを意味している。


 アメノムラクモノツルギとクサナギのツルギの関係

アメノムラクモノツルギと、クサナギノツルギは、同一のアーティファクトを指す名前である。このアーティファクトは幻夢神の分霊であり、つまりは神である。それぞれの名前は、この神の『和魂』としての側面と、『荒魂』としての側面を表す名である。

このアーティファクトの元々の名はアメノムラクモノツルギであり、守護者である英雄神スサノヲの持つ刀という、和魂としての側面しかなかった。しかし永い戦いの中、表舞台から姿を消したスサノヲの手を離れたアメノムラクモノツルギは、紆余曲折の末、侵魔の手に渡ることになる。

強大な力を持つが、敵対する「神」であるため、侵魔の手では思うように力を引き出せないアメノムラクモノツルギ。侵魔側は、このアーティファクトの持つ力を自分達にも扱えるようにするため、冥魔の瘴気によって汚染させ、荒魂として成立させる計画を実行した。この時召喚されたのが、冥魔ヤマトタケルノミコトである。

ヤマトタケルノミコトは、アメノムラクモノツルギにクサナギノツルギという名を被せ、この神を冥魔化することにした。冥界譲りの恐るべき侵食力を持つ瘴気に中てられたアメノムラクモノツルギは、徐々に荒魂としての側面である、冥魔クサナギノツルギへと変化していく。またヤマトタケルノミコトも、クサナギノツルギの強大な力を自在に引き出し、恐るべき強さを発揮することが出来た。

この事態に危機感を覚えた守護者側は一計を案じ、ヤマトタケルノミコトとクサナギノツルギを切り離す策を講じる。連戦連勝の戦に慢心したヤマトタケルノミコトの隙を突き、この冥魔がクサナギノツルギを手放したその瞬間に、ヤマトタケルノミコトを討ち滅ぼすことに成功したのだ。

その後のこのアーティファクトの行方については、『第2段階の秘密』のカテゴリにある『クサナギノツルギ』の項と、『アメノムラクモノツルギ』の項にあるとおりである。ヤマトタケルノミコトを討つことには成功したが、守護者側は、北条政子が壇ノ浦の海底から回収するまで、このアーティファクトを回収することは出来なかったのだ。

さて、永い時の末、守護者の側に戻されたアーティファクトだが、TISがこれの浄化をするために詳しく調べた所、恐るべき事実が分かった。アメノムラクモノツルギが、完全にクサナギノツルギと化す、つまり冥魔化すると、幻夢神自体が冥魔化する可能性が大きい、という事である。

『第2段階の秘密』カテゴリにある『アメノムラクモノツルギ』の項にある通り、このアーティファクトは幻夢神の分霊である。つまり、幻夢神とは別の神であると同時に、幻夢神と同一視できる神でもあるのだ。この神が冥魔化するということは、即ち『幻夢神が冥魔になる』という事と同義であると言える。世界の管理神が冥魔になってしまえば、その時点で第八世界は冥界に堕ち、滅びを迎えることになる。北条政子は、タッチの差で、この世界滅亡の危機を防ぐことに成功したのだ。それは、本当に紙一重の差であったのだ。

ただし、その時は表界だけでなく、侵魔達の世界である裏界も等しく滅びることになる。如何に世界に害為す侵魔とは言え、自分達の住む世界まで滅びてしまえば本末転倒。そんな事を望むはずがなく、つまりは侵魔側は、冥魔を利用するつもりで、実の所、自分達が冥魔に利用されていた、という事であった。その冥魔達の狡猾さに、守護者側の者達は言葉を失ったことだろう。

この事態に対処するため、守護者側は策を講じる。既に半ば以上冥魔と化したこのアーティファクトを単純に浄化することは、最早不可能だった。よって、冥魔の部分、つまり荒魂を切り離し、同等の力を持つ和魂を持って封じつつ、時間をかけて浄化を施すという、次善の策を採る事とした。いずれ、この荒魂が完全に浄化されるまで、この封印を護り続ける役目は、既に鎌倉幕府の重鎮として権勢を振るっていた、北条政子に任されることとなった。なお、この時切り離された荒魂こそ、冥魔クトゥルフである。

こうして、『北条政子』は『北条まさこ』となり、以来何百年もの間、鎌倉の封印を護り続けている。


 幻夢神と冥魔神

幻夢神が完全に冥魔神と化すトリガーは、『第3段階の秘密』カテゴリの中にある『アメノムラクモノツルギとクサナギノツルギ』の項にある通り、『アメノムラクモノツルギが完全にクサナギノツルギと化す』事である。実は、この危険はまだ去っては居ない。全ての元凶であるヤマトタケルノミコトの転生者である源義経が「クサナギノツルギとして遺産を入手」し、冥魔として完全に覚醒してしまったら・・・。

その時、アメノムラクモノツルギはクサナギノツルギとして、完全に書き換えられることになるだろう。

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