第13話クラリスVII
【サイド・クラリス】
威勢がいいわね。
やっぱり、あの人を愛しているのだわ。
ずっとついてくる。馬車で走っても、姿が見えなくなるまで走っても。彼女の影はつきまとう。
でもね、そう。だから、なの。ローラ。
あなたのものだから、私はあの人が欲しい。
私は馬車の暗がりから外に出た。一言、あの女を誘惑してと、となりの男に言い残して……。
実際、彼は若くて金持ちだから、実行したのだろう。誘惑して口づけして、篭絡(ろうらく)した。あとは、あとは……知らない。
私は逆の事をした。
あらゆるつてで、彼を仕立て屋見習いの身分からひきあげ、デパートでオーダーメイドを引き受ける仕立て人として、採用させた。
嫌で嫌でしかたがなかった支配人は、ちょろかった。味の濃い料理の後で強いお酒をがぶ飲み。あっけなくコロリ。直接手を下すまでもなかった。
そのあとは全て私の思うがまま。上司はたらしこみ、邪魔な相手は手料理でもてなし、さらに疑われる危険性もなく左遷させた。手料理(アップルパイ)は、そう。あの日の記念碑。
初めて、恋をしたと思った。彼が欲しいと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます