第2話ローラ

【サイド・ローラ】

 へっ、なんだか知らないけれど、よくもまあ胸の開いたぺらっぺらの洋服なんか着てられるよ。まあ、洗濯は楽だけどね。

ここは田舎の下町さ。電気もガスも水道も、こんなはきだめには、ゆきわたってない。

 けどまあ、空気はいいわさ。

 洗濯もの一(ひと)かご数ポンド。子供のころからやってるから、お得意さんは多いよ。力のない女子供の商売なんだわ。

 だけどね、こういう特殊な衣服だと型崩れしやすいし、他のとは別にしなきゃいけないし気をつかうよ。また、あのクラリスって女だわ。

 まあ、小遣いはたまっても、買うものは思いつかない。さして裕福でもないし、どんぞこ生活ってわけでもない。下町産まれの下町育ち。井戸端でせっせと他人の服を洗って絞って、クリーニング屋、兼、仕立て屋見習いのセバスチャンに仕上げてもらう。

 彼、私に気があるみたいでさ、よく昼食を差し入れしてくれる。だから、ちょっとサービス。ありがとうって意味で、左頬にキスして瞳を見つめたら、次はヘイゼルナッツのチョコレートなんてものを持ってきた。都会へ行った土産だとか言ってたなア。

 都会か……近くのようで遠いなア。市場なんか、目じゃないんだろうなア。なんでも、店長が仕立てたそろいの服を、なんとかいう旦那に届けに行ったんだってさ。

 私らはこんなんだからさー、学もないし、まあハスッパとよばれるよ。尻軽だし。まっとうな仕事? なにそれ。おいしいごはんが食べられりゃ、なんでもいいの。ほんと、なーんでも。それ以外の夢なんかありゃしない。

 私を呼ぶ声がする。セバスチャン? ちょうどあんたのチキンサンドを思い浮かべてたとこだよ。


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