第53話 裏口詐欺

俺の勤める予備校に、志望校にギリギリ合否ライン上の生徒がいる。


そこで俺は親御さんに裏口入学を持ちかけてみた。

そこの教授にお礼を渡せば、入試でよほど大きな失敗をしない限りは合格になりますよと。

もちろんこれはデマカセである。


俺はかなりの大金を受け取ったが、それで特別に何かをするわけでもない。

ただ彼が実力で合格してくれるのを祈っただけである。


もし不合格ならば

「教授も動いてくれたのですが今回は」

と全額を返却する。

金さえ返してしまえば詐欺罪は成立しないのだ。


そして彼は見事に合格してくれた。


「おめでとうございます。私も教授にお願いした甲斐が……」


親御さんが無言のままテレビをつけると、ちょうど大学教授が懲戒解雇されたというニュースをやっていた。

実は痴漢事件でしばらく逮捕勾留されていたのだという。


「きょ、教育者の風上にもおけないとはこの事ですね」


「まっったく同感ですな」



遠くからサイレンの音が聞こえてきた。

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