第7話 命日

「うわっ出た!」


「おっと驚かせてすまないね」


「お爺さんごめんなさい。ここ、いつもあまり人が来ないから僕てっきり……」


「てっきり幽霊かと思った?」


「違い、ますよね?」


「私はまだかろうじて生きているよ」


「ごめんなさい、幽霊なんているはずないのに」


「はは、もう気にしなくていいよ」


「そうだ僕、弟を探しているんです。お爺さん見ませんでしたか?」


「キミの弟……」


「はい。あいつ僕が目を離すと危なかしくて」


「ああ……その子ならさっき会ったよ。今頃は家に戻っているんじゃないかな」


「よかった、安心しました」


「もう遅いからキミも帰りなさい。お父さんとお母さんもきっと心配しているから」


「はい、お爺さんさよ……な……ら」


「待って!本当は言いたいことがたくさんあるんだ!」


老人は虚空に叫んだ。


「溺れた私のことを助けてくれてありがとう、ごめんなさい、お兄ちゃん、大好きだよ……」



沼のほとりに花束を置き、老人は手を合わせた。

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