第128話 セレンディピティとは

「ね。セレンディピティって何」と、女が尋ねる。ベッドの上で携帯を見ながら気だるそうに男が答える。



「偶然の出会いってやつだよ」

「人との出会い?」

「人にも限らないんじゃないかな。仕事とか、探してるものとか」

「いじめられている亀を探してたら、亀と出会う。これもセレンディピティ?」

「竜宮城に行きたいの?それとも何かの比喩?」

「セレンディピティのことが知りたいのー!」

「その単語、どこで聞いたの?」

「友達が飲み会の席でいってたー」


女は、Siriに話しかける。


「ねえ。Siri、セレンディピティって何?」スマートホンは答える。


「セレンディピティとは『幸運の発見』です」

「よくわからないよー、Siri。もっとわかりやすくいって」


「困った時はWikipedia」と、女は検索をする。


>セレンディピティとは素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること 


「そんなの言ってもさ。ラッキーと何が違うの?!」


「インターネット時代になって、情報は簡単に手に入るようになったけど、簡単に理解できるかどうかは別なんだね」と、女はベッドの上で男の背中に飛び乗った。


翌日

「今日、セレンディピティのことがわかったよ」

「お、どうしたの?」

「飲み会で、セレンディピティの意味がわからないーって言ってたら『私、セレンディピティに詳しいから教えてあげるよ』って、その女の子と2人で二次会で教えてくれたの」

「すごいじゃん。その出会いこそ、セレンディピティだよ。探していたものと、適切に出会う」

「ほんと?!その後に、青汁ダイエット食品を売りつけられそうになったけど、それもセレンディピティ?」

「…….。それは相手にとっては『いい鴨』っていう表現がよく使われるね。ある意味、セレンディピティかも」

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