第99話 携帯の裏返しは浮気の証拠?

「ねえ。携帯を裏側に置く人って浮気してるんだって」


女が言う。男はテーブルの上に置かれた携帯に目をやる。裏側に置かれている。


男は、「へえ」と言いながらアスパラガスを口に運ぶ。そして、ワインを一口飲む。


「会社のやり取りとかもたまにLINEでするから、裏側に置くようになったな。企業秘密なことがディスプレイにでちゃうとまずいでしょ」


「ふーん」と女が言う。アスパラガスもワインも手にしていない。


「ねえ。じゃあ賭けてみない?」女が言う。


「かける?」


「この食事が終わったら携帯を裏返して。


その時に女性からのLINEが来てたら私の勝ち。きてなかったらあなたの勝ち。負けた方がここの食事代を払うの」


男はワインをもういっぱい口に含む。ゆっくりと。


男は考える。


- アケミはこの時間はLINEを送ってこないから大丈夫だろう。送るとしたらサトコだが、頻度は週に1〜2日。そうすると、確率は2/7だ。さらにこの時間に送る確率はもっと低いだろう。悪くない賭けだ。何より、そもそもこの賭けにのらないと、ユウコに怪しまれてしまうしな


「今日の食事だけじゃあ掛け金としてつまらないから、一ヶ月分の食事でどうかな?」と男はいう。


- ここまで自信ありげにしておけば浮気は疑われないだろう。しかし、これはブラックジャックだな


女はワインに手をのばす。ボトルに残ったワインは残り1/4程度になっている。


「そういうなら2か月分にしましょうよ」


男はワインを持つ手を止める。


「いいよ。いつまで?デザートが来るまででいい?」


「いいわよ」


そして、2人は食事に戻った。いつもより口数は少ないが。男は早く食事を終わらせようと早いペースで食べる。女はマイペースで食事を食べる。


そして、40分ほどの時間が経過し、デザートが運ばれる。


「よし。時間だ。携帯を開いていいかな?」


「そうね」


男が震えた手で携帯を表にし、ホームボタンを押すとディスプレイが光る。


そこに光るLINEの通知。ユウコの名前。そして「来週の食事は、ロブションでお願いね。その翌週はお寿司がいいかな」というメッセージが光っていた。

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