第33話 ルートのワザ

 朝になってそこにはベットに座ったまま倒れて寝てるニタと、部屋の書き物机にかじりつくように、多分昨夜明け方までニタに聞いた話をまとめてるルートがいた。ルートと部屋を別にした意味ないんだけど。

 そして、ニタをちゃんと寝かせてやれよルート!



 さて、荷馬車探しに行く。街の一各区全部が荷馬車停留所のようになってる。ここは大きな街だから交流も盛んだからだろう。次に行きたい方面か確認して俺たちのスキルを説明して乗せてくれるか交渉する。なんと一発で決まった。


 もしかして、チラリとルートを見る、大人がいるからか! 俺たちの問題はそこだったのか?


 でもルートの怪しさは隠しきれないはずなのに。勇者伝説を知ってるリンも迷ってたぐらいに。魔術師だからか? 魔術師っていかにもって感じするしな。あと、占い師も。どちらも怪しければ怪しいほど強そうだもんな、力。




 まあ、乗る荷馬車が決まって良かった。


「ニタどこまでなんだ?」


 道案内は人まかせな勇者。


「うん? ああ、ここまでだよ」


 地図を広げて教えてくれる。予想したより早いな。


「早いな」

「トオル。一日でここまでじゃないよ。ここまで行く荷馬車ってことだよ」

「あー。うん。そうだよな。うん」


 慌てて繕うがニタは怪しんでる。


「トオルってホント……」


 う、続きは言うな、ニタ。傷口が広がるから。



 スタートして、すぐに気づく。荷馬車は早い。本来なら。魔法でかなり加速しているから。だけど! 魔物の群れに会うんだよな。速度が早いから余計に早くに出会う。その度に止まり魔物の群れを切って行く。終われば道に落ちてる魔物の死骸を道の横に寄せる。これって、船での作業を思い出すんだけど。

 って! 今度はニタも作業に加わるが、ルートいい大人のくせに知らんぷりしている。働けよ少しは! ってか徹夜したから眠いんだろうけど、人が戦ってる時には寝るな! 今のこれは書く気あるのか?



 一日目の荷馬車の旅も終わり街に泊まる。

 疲労困憊。寝ようとすると

 トントン!

 あ、ニタ! ダメだ!


「はい」


 ああ、ニタの奴、返事しちゃったよ。

 ガチャ

 ってまた、入ってくるよ。昼間寝てた奴が。


「もう、疲れてるんで!」

「少しだけだから」


 強引さはピカイチだよな。ルート。

 また、ニタはルートに捕まる。間を見て口を挟んで俺はルートを追い出そうとするが上手くいかない。なんて奴だ。魔物よりたちが悪いぞ。疲れていたから、体をつい横にしたのが最後、俺の記憶は飛んだ。



 朝起きると昨日のデジャブかと思うほど、同じ光景だった。ニタ、体を壊すぞ。


「ルートいい加減にしてくれよ! まだ旅は続くんだ。ニタの体力が持たないだろ! 伝説書くよりその伝説そのものの方が大事だろ! これじゃあ続かないよ。荷馬車に乗ってる間にニタに聞いて、一人で宿屋で書け!」


 もうルートが年上とか構ってられない。だいたい俺と生きた年数は同じくらいだし。

 ただし、俺には聞くなと再度念を押したけどな。自分の話をできるか! 恥ずかしい。


 珍しくしょぼくれてルートは部屋へと帰って行った。

 なんでこう手間のかかる連中ばかりなんだよ。ルートに比べたら他のメンバーは可愛いものに思えてきた。思い込みの激しさではルートは一番だな。



 荷馬車は再びスタートする。おいおい! ルート、確かに荷馬車で聞けって言ったけどみんなに聞いて回るなよ。

 いろんな感想が出てきてポジティブなニタの発言だけでも嫌だったのに。だんだん俺の顔が暑くなる。言ってる本人も顔赤いよ。リンもジュジュもツバキも顔を真っ赤にしているが、ルートお前のワザはこれか?

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