第22話 名付け放題

 やる気がなくなっている場合ではない。次々と襲ってくる魔物に対応していたら、そんな気分じゃなくなる。特にイカやワカメ系のヌメヌメには乗船を絶対断らねばならない。



 やっと朝日が、見えてくる。長かったよ。って油断してたらまた声があがる。


「魔物! 前!」

 絶対サボってるよ見張りの者たち。まあ、サボりたくなるぐらい出てくるけどな、魔物。



 前へと走り出る。この鐘、邪魔だ。大事なんだろうけど……邪魔だ。

 下を見るとまた新種。おいおい! 海ならなんでもいいのか? 確かにこれなら水陸両用だけどさ。ペンギン。足が可愛さを失ってる。完全な二足歩行を可能にしてるよな。そうくちばしも邪悪さが優ってる。手も違うだろ? 確かに原型じゃあ船に登って来れないが、もう手だよ魔物の手。なんか手の甲がゴツゴツして見えるのは、もう気のせいじゃない! と言い切れる。よく俺ペンギンってわかったよ。目も怖いし。こっちをにらみながら魔物達が登って来てるし。が、なんだろ重いのか? 登る速度遅くないか? イライラする!! 紫の煙の中ペンギンの魔物が登ってくるの待ってるのイライラする!! お! これ使えるか? 今が使い所だな。


 俺はつるぎを持ち替えてつるぎの刃を下へ向ける。海へ向けて少し船からは離す。船を壊して船長に睨まれたくないからな。


 つるぎを持った両手を頭の上から下へ一直線に、今は斜めだけど降ろす。


 ドドド、ドーン!!


 海中にいた魔物ペンギンが海水と共に宙に舞い上がり、そのまま海の中に落ちて行く。ペンギンは目の高さまできたけど傷だらけだ。俺何をしたんだろう。思い浮かんだワザを使ったんだが、なんか想像以上だった。どうやら今の勢いで船にへばりついていた数十匹の魔物との対戦になった。

 これめっちゃ使える! あ、船の上にいる時のみだけど。

 今回はあっさり戦闘終了。

 みんな俺を見てるよ。なんか目立って恥ずかしいな。……明日は別の意味でさらに目立ちそうだけど。




「坊主! すごいじゃないか! 浮かんだのか? 浮かんだのか?」

 船長、今まで見たことないほど浮かれてるよ。きっと今後の戦闘を想像したんだろうな。

「あ、はい。ふと」

 そうだ。あのペンギンのノロさに苛立って浮かんだ。なんかあんまりいい新ワザの浮かび方じゃないな。

「そうか! さすが勇者だな!」

 船長の勇者のイメージがどんどん変わってるな。最初あんなにふんわりだったのに。





 その後もこの技でかなりの数の魔物を海へと返す、あ、まだ海中にいたけど、まあ、撃退した。


 みんな感謝的な顔で俺を見てる。俺もされたら見るな。絶対。あの魔物がウジャウジャと登ってくるのを切るを永遠に続けてる感覚はもう嫌だ。



 おお! 楽勝な朝だ! 体力も十分に残ってるし、いい気分で寝れそうだ。あいつらとも話さないといけないしな。




「ま、魔物の大群!! 前方、右、左囲まれてます!!」



 おいおい! 本当にすんなり交代させてくれない魔物だよ。

 とりあえず右に走る。

「戦闘員呼んで来い!」

 船長の叫びも聞こえる。

「坊主頼むぞ!!」



 俺は頷きまずは右側からやって行く。



 ドドド、ドーン!!



 すぐに前方へ移動する。今回はサメだ。もうかなりの数が登ってきてるが、今はそっちにかまってられない。海中の大群を木っ端微塵にしなければ、魔物に船乗っ取られる。この数なんだよ。



 ドドド、ドーン!!



 すぐに左側へ移動する。

「トオル!」

 って声にも振り返ってる場合じゃない。続々と海から船に上がってくる。



 ドドド、ドーン!!



「す、すごいよ! トオル!!」

 ジュジュ仕事ないからってそこにいたら危ないって。ジュジュに注意をしようとすると。


「魔物後ろからも上がってきます!!」


 マジか。後ろに向かいながら、絶対サメの巣に入ったなこの船! と思わずにいられない。


「ジュジュ中に入ってろよ!」


 言い残して後ろに到着。真ん中に入ってワザを使う。



 ドドド、ドーン!!



 ドヨドヨ一瞬なった。昼間の人たちなんだろうな。はじめて見た時はどよめきが上がる。が、今はそれどころじゃない。その場でサメを切って行く。相当な数だがこれ以上はいないと思えば見えてるだけましだ。




 後ろは安定してきたので、前に戻る。やっぱり数が少ないからか、サメが甲板に。嫌だな後片付けと思いながらも切って行く。気をつけないとまた服を切り裂かれる。あ、服じゃあ済まなかったときの想像はあの牙を見てたら考えたくなくなるから。




 魔物が少し減ってきて周りを見る余裕が出てきた。お、マジか。ニタの火柱マジですごいが、なんだろう船に当たったら困るからか、あれでMAXなのか、火力にイマイチ迫力がない。リンは丸かと思いきや、トゲトゲのよくマンガでチェーンにつながってて悪者が振り回す奴みたいなのを降らせてた。それに、ツバキ! なんだよめっちゃ切れてるじゃないか。横一列の魔物をズバズバって海へと落として行く。いつも間に進歩してるんだ。

「トオル右!」

 おっと、やばい。油断し過ぎてた。ジュジュの声で目の前にいるサメをグッさグッさと切りつけて行ってなんとかなった。




 今回のサメの魔物の大群を蹴散らす事が出来た。




 せっかく楽勝ムードもぶち壊しだよ。またまた魔物を海へと捨てる。この作業地味にキツイ。サメ重いしな。

 ヌルヌルじゃないだけましか。牙がまだ怖いが、続々と魔物が海に捨てられる。海の中ってどうなってるんだろ?




 掃除も終わり、やっと終了。疲れた。今のでドッと疲れが来たよ。でも、まだ交代じゃない。交代してなかった。

 緊張を続け、交代を待つ。さっきの群と戦って、もう近づいてるんだと思い知らされる。魔物がウジャウジャな海へ。



 食事が終わった人から出て来る。

 四人も出てきた。

「トオルさっきの技!」

「お前らいろんろ言ってないだろ!」

 ジュジュと言葉がかぶった。

 ちょっと沈黙。どの話からか?

 一番大事な話がある!

「ニタ怪我したなら言えよ。治ってても!」

「うん。ごめん」

「それから火柱! あれはその……」

 うう、聞きにくい、あれがニタの精一杯だったら話を続けにくいし。

「そう! すごいでしょ! 私がルメラって名付けたの!」

 名付けるの好きだなジュジュ。

「それにツバキのワザも疾風切りって名付けたのよ!」

 名付け放題だな。ジュジュ。

「トオルのワザも名付けたからね」

 い、何時の間に。あのサメの魔物の襲撃中に考えたのか? 余裕があり過ぎだフェアリー!

「地雷切り!」

 え? 地面関係ないんだが。雷も。どうしよう、イメージだな。イメージでつけてるな、ジュジュ。

「あ、ああそうか。うん」

 もう適当な相槌で乗り切るしかない。

「見たかった……」

 リン、さっき見たよな。絶対見てたよな? 前で三回はしてたし、ジュジュも見てるし。

「見たかった……」

「ああ、またな」

「見たい」

 ウルウル見つめるんじゃない。またメイド服、じゃない? 着替えてるし。これも新しい服だ。ロリな感じでスカートフワフワだよ。なのになぜ上は薄着な感じで露出が多いんだ。ってかリンが何を目指してるかわからない! 可愛いんだけどな。

 ハッ! それよりもこの事態だよ。

「じゃあ、今夜な」

「うん」

 絶対こう言わないとリン、納得しないな。あれ使う時はすごいピンチが多いから嫌なんだけどな。

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