第55話 おーい

「ちょっと!白石さん!待って! どこ行くの!?」


 他のスタッフが呼びかけたが、白石は振り返らず、そのまま大通りの人混みへと紛れ込んでいった。


 僕と玲奈は慌てて店を出て、辺りを見回した。


「こっちだ!」


 僕が人混みの中にちらりと見えた白石のブロンドの影を指差し、2人で後を追う。


 だが――。


 ゴールデンマイルコンプレックスは、迷路だった。


 入り組んだ飲食店の裏手。細い階段。なぜか途中で行き止まりになる通路。空調の配管がむき出しの薄暗い廊下。観光客向けのフロアの裏に広がるこの複雑な構造は、追跡には最悪の舞台だった。


「もう~どこ行ったの……!」


 玲奈は苛立たしげに周囲を見回す。


 僕も必死で、白石が立ち去った通路を探索したけど、気づけば似たような飲食店の裏手で立ち止まっていた。


 まるで巨大な蟻の巣みたいなこの場所じゃ、一度見失えばもう追いつけない。

これ以上二人ばらばらで回ると、二人とも迷子になる可能性が大だな。

 その後、二人でなんども迷いながら、ようやく複雑な建物の出口の階段を見つけ、僕たちは地上へと出た。


 そして建物の表通りにでたその時だった――。


 シュッーーーーという音と共に、真っ白なマイクロバスが僕らの目の前に停まった。


 横滑りするように止まり、スライドドアが開く。


 運転席には、清水がいた。


「すぐに乗って!白石さんの乗ったタクシーのナンバーは覚えてるから!」


「は!? ちょっとちょっと!なんでマイクロバスなんて乗ってるの? 」


 僕が思わず叫ぶ。


「いやあ、すまん。セダンとかSUVとか全部貸し出し中で、これしかなかったんだよ、我慢してくれ」


 清水はシートベルトを締めながら、あくまで軽い口調で答えた。


「そーいう意味じゃなくてさあ……」


 呆れる僕の横で、梶本がさっさとバスに乗り込む。


「グダグダ言ってないで早く行くよ。あの女、まだそんなに遠くへは行ってないはず」


 僕もため息をつきながら乗り込み、スライドドアが閉まると、マイクロバスは走り出した。


 助手席には田中がいた。

「こうくん!良かったあ、ここから出てこれたんだね~あと、清水の運転については後で説明するから」


 4人での追跡が、ここから始まった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る