家族らしいです

 時が経つのは早いもので、私が異世界に転生してから半年が過ぎました。

 その間の私はといえば、ハイハイを覚えやっとタッチが出来る様になりました。

 ベビーベットという檻からから解放された私の当面の目標は、自力での家探索。

 お散歩の時以外この部屋から自由に出れないのが哀しいからです。

 まあ外見上今の私は赤ちゃんなので仕方がないのですが。


「ユナティアは元気だな~」

「きっとアナタ似なのよ」

「そうか? お転婆なのは君似じゃないのか?」

「まあ~カルったら」


 よちよち歩く私を見て仲睦まじくお話ししてる男女。

 この世界での私の両親になります。

 黒髪紫瞳の青年はカルティア・ノルン。

 今の私のお父さんです。

 父は村の自警団長兼交易商をしてるらしく、経済的にはかなり裕福な家庭みたいです。

 まあ質実剛健が家訓らしく派手な暮らしはしてませんが。

 人望もあるようで、父へ相談しに来る人が常に絶えません。

 穏やかそうな中に一本芯のある人なので、頼りがいがあるからでしょう。

 でも一見優男風の外見とは裏腹に、武芸の腕前は団長を務めるだけあって相当のものらしいです。

 一度だけ街道に設置された妖魔避けの結界を打ち破った魔獣が暴れたらしいのですが(この世界にはファンタジーな妖魔や魔獣がいるそうです。ゴブリンやトロールでしょうか? ユニコーンやペガサスなら会ってみたい気がしますけど)、要請を受けた父が駆け付けすぐに鎮圧したらしいです。

 カテゴリーAクラスとやらの魔獣を即時退治する。

 怖い人です。

 母相手にうだつのあがらない姿からは想像もできませんが。



 蒼髪翠瞳の女性はマリーシャ・ノルン。

 私をこの世界に産んでくれたお母さんです。

 すっごく綺麗な人で、女性から見てもドキドキするような容貌です。

 私はそんな母に似ているというので、今から楽しみにしてます。

 母はこの弓手村フェイムのヒーラーをしてるらしく、回復魔術と薬草で村人や冒険者達から感謝されてます。

 一見おっとりしてますが、そこは女性。

 怒ると怖いです。

 父を叱る姿を見て、私はいい子でいようと決意しました。



「あれ~何してるんですか?」

「お、ユナティア。珍しく起きてるのか」


 勢いよく扉を開けて入ってきたのは二人の男の子です。

 そう、私には兄がいたのです。

 二人とも黒髪紫瞳は変わりません.

 私もそうらしいですし……優勢遺伝というものでしょうか?

 二人とも黙ってると美少女と見紛うくらい可愛いです。

 この辺は母似なのでしょう。



 3つ離れた兄はシャスティア・ノルン。

 父に似て穏やかな人で、何かと私に構ってくれます。

 自然体が心地よく、こんな人の彼女になれたら幸せでしょう。

 少しズレた感性が残念ですが。

 母の次に私はこの兄が好きです。

 自己主張に欠けるのが欠点でしょうか。



 4つ離れた兄はミスティ・ノルン。

 何と云うか……トラブルメイカーな人です。

 興味があれば何事にも顔を出し被害を拡大させてます。

 陰険で性悪らしいですが、楽しさも倍増させてるので『憎めない』そうです。

 苦情を言いにきた村人に両親がよく謝罪してます。

 私も巻き込まれたことがあるので、正直苦手です。

 シャス兄様が助けてくれなかったら危険がデンジャラスだったでしょう。

 彼が怪しい笑みを浮かべてる時は警戒するようにしてます。



 以上が私、ユナティア・ノルンの家族です。

 まだうまく発音できないので喋れませんが、早くお話ししたいです。

 でも……それにしても眠い。

 これは何でしょう?

 ここ半年間、一日の大半を寝てる気がします。

 それに少し自我が希薄になっていくような……

 言葉遣いもおかしいし、これはピンチでしょうか?

 様々な憶測に悩みながらも、私は異世界な日々を過ごしてます。


「おや、ユナはおねむかな?」

「あらホント?」

「よく寝てますね」

「きっと寝坊助なんだろ。大物になるな」


 皆が思い思いに声を掛けてくれますが、私の意識は彼岸の彼方。

 ごめんなさい、今日は休みます。

 ZZzz...

 

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