いつか君に××されるぼくができること。

@mmm555

第一章 ぐるぐる廻る、僕らと僕とそらの彼女

その0 ぷろろーぐ





5年前。



僕は、血塗れた黒い部屋に立っていた。

壁も、床も、天井でさえも。

ただただ、濡れいてる部屋。

慣れているが、親しみもない部屋。

そこに、いつも、あの子が、いる。

壁みたいに血塗れて、床みたいに血塗れて、天井みたいに血塗れた。

その子がいる。

目の奥はにごり、長い髪はよごれ、床に倒れているこの子。

どうすることも出来なかった。

だって僕には、何もないんだから。

空っぽの僕には、抜け殻の僕には。

どうすることも出来ない。

「………ごめん、なさい」

彼女は、つぶやいた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

何度も呟いて、呟いて。

僕はそれを眺めながら、ただ立っていた。

だって、何に謝っているのか、僕には分からないから。

だって、聞くことしかできないから。

だって…。

「ごめん、なさい」

ずっとつぶやくその子は、喉が掠れても、謝るのをやめない。

それを聞いて僕は、ふと思う。


……………………………………ああ。


ああ、そうか


僕が。


僕が彼女に。


××されればいいんだ。


そう思って手を伸ばす。

その子の手を掴むために。

掴んで、抱き起こすために。

僕を、××してもらうために。

「………」

掴んだ手は、とても冷たくて。

とても、生きてるとは思えなかったけど。

それでも僕はその手を掴んで、抱き起こす。

「ねえ」

その子に話しかける。

「僕じゃ、だめかな」

彼女のにごった目が、少し、動いた。

「君のこの全てを、もらってあげるから」

だから。

「君に××されるのは、僕じゃ、だめかな」

僕にとっては、たった一つの、小さな意思。

返事はなかった。

でも。

彼女の目に、僕が映る。

それだけで、満足だった。

だから僕は。

彼女ために。


全てを壊す、ことにしたんだ。

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