第24話 アニメを見ながら
BDを取りに行っている最中、僕はとても後悔していた。その理由は単純に、プールに行き疲れているのに、忘れ、アニメをワンクール一気見しようとしている。だが、ここまで来れば、もう引き下がれない。寝る選択肢は取りに行った時点でほぼほぼ消えている。
「それじゃあ、始めましょうか」
予想はしていたが、やはり、奏さんはノリノリだった。これで完全に逃げ道を塞がれた。
「そうですね。始めましょうか」
こうして、天国と地獄になるアニメ上映会が始まった。
「アレ?この曲ってこの時代にあったっけ?」
「えぇ。明治17年に発表されたらしいですよ?」
「そう」
1話目のOPが終わり、流れてきた卒業式で歌う曲が流れ、奏さんは不思議に思ったことを僕に聞き、僕は覚えている事を話した。
「あ。私この回好き」
「ほとんどのファンはそのはずですよ」
6話目に入り、奏さんは再び声を発した。
「聡夫君はどっちの方が好き?」
「僕はスオムス空軍少尉……いや、2期は確か中尉のはず……派ですね」
「そう。私はオラーシャ帝国陸軍の中尉のナイトウィッチ派ね」
「そっちも好きですけれど、1番を聞かれたら、確実にスオムス空軍の中尉派ですね」
「未来予知魔法派ね。多いわね」
「ペアでの推しが1番多いと思いますよ?」
「それもそうね」
なんだろう。この微妙な空気。
「それはそうと、どれぐらいの事を知って消されかけたの?」
「ほぼほぼ全てですかね」
「へぇ〜。私以外にもそこまで辿り着けた人居るんだ」
今さらっと恐ろしい事を互いに言った気がするが、気にしないでおこう。こういうのは、気にしたら負けだ。
「それで。美桜ちゃんを追い出した理由は?」
「追い出したとは人聞きの悪いですね。アイツは何も知らなさ過ぎるんですよ。我妻家も自分の事も。それに他にも気付いてない事もありますから。だからいい機会かなって」
「なるほどね」
美桜がいつその事に気付き、ここに自主的に戻ってくるのか、剣君を言い訳に戻ってくるのかは分かりませんがと心の内で付け足しておく。
事実、美桜は何も知らなさ過ぎる。それは単に我妻家から出ず、学校にも行かなかったからだと思われる。もちろん、行ってないなんて言い切れないが、99%の確率で行ってないだろう。
「奏さん。我妻家は、我妻千代子は生きてると思いますか?」
「生きている……と思う。もしかしたら、もう近くまで来ているかもしれないけれど、多分生きている」
確信はしていない。半々という感じだろう。
「逆に聞くけれど、この程度であの子が死ぬと思う?」
「ですよね……質問自体が野暮なものですよね……」
「あの子は昔っからしぶといからね」
「ですね」
「まぁ、本当に近くに居れば、私も貴方もヤバいけれどね」
「……地味にフラグを立てるの止めてもらえません?これで近い内に会えば責任取ってもらいますよ?恨まれ者の奏さん」
「あら?私ってそう呼ばれているの?」
「他にもありますよ?裏切り者の奏さんとか、暗殺しに来る奏さんとか」
「そこまで言われていたのね」
「えぇ。貴女が抱えている事案も知ってますし、それを取り除ける可能性も知ってます。なんなら、出来るだけ安全な方法で取り除きましょうか?」
「貴方どこまで知ってるの?」
「さっきも言ったじゃないですか。ほぼほぼ全てですよ。ほぼほぼ」
「ブラフじゃなかったのね」
「えぇ。こっちも、取引のつもりで話してますから。なんせ、これ以上僕の邪魔が増えてほしくないのでね」
「何をしようとしているか聞きたくはないけれど、条件さえ飲めば出来るの?」
「僕が知る限りで1番安全でやろうと思えば出来ますね」
「ふーん」
「あ。でも、今はしませんよ?なんせ、もうすぐで挿入歌が流れて神シーン来ますし」
「分かってるわよ」
その言葉を言い終わると、挿入歌の神曲が流れ始めた。やはり、このシーンは何度見ても良いと思う。このペアだから出来るシーン。それを見て感動しない訳がないだろう。
「それじゃあ、僕は寝ますね」
「えぇ。あの話はまた今度」
「おやすみなさい」
アニメ上映会が終わると、僕はすぐに寝た。
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