第4話 彼 (小郡空)

 家に帰ってから空はeiDを立ち上げ、thaeDにログインした。思えばthaeDを始めた理由も解斗だった。


 あれは夏休み最後の日のこと。


 昼過ぎ、妹にお菓子を買ってあげようと思いコンビニへ行くと、偶然……いや、必然的で運命的に彼と出会った。


クーラーの風がなびくたびにゆれる純白の髪。少し碧がかった大き目の瞳。日焼けなどなく、夏だということを忘れさせるほど白く艶めかしい肌。


 それは他の誰でもない、三国解斗だった。


 解斗はその碧の瞳でじっと何かのプリペイドカードとにらめっこしていた。


 ドクンドクンと空の鼓動が高まる。感動が体中を駆け巡る。空は一歩踏み出し解斗に声をかけようとした。


 でも、なんだかのどがからからになってしまって、あ、あ、という嗚咽に似た何かが聞こえるだけで声が出てこない。


 そうこうしているうちに解斗は会計を済ませてそそくさと帰ってしまった。


 今でも覚えてる。解斗の買っていった商品は「thaeD専用プリペイドカード20000円」だった。


 空は妹のお菓子を買うのも忘れて家に帰るとすぐに、eiDを立ち上げて、thaeDで検索した。すると1000万件ヒット。ソラデの公式サイトがあったのでそこからインストールした。


 解斗の買っていった額から察するに、thaeDを彼はかなりやりこんでいるのだろう。だとすれば、AnotherWorlDで毎日会えるかも。話せるかも。また二人で歩けるかも……。


 そう考えると、インストールの待ち時間さえも、空はむずがゆくて仕方がなかった。

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