言葉の濫用
その世界にたった一人だけ
何より素晴らしい人間がいた
彼は誰より優しくて
誰よりも幸せだった
誰よりも働き者で
無欲で慈悲深かった
しかし誰かが
「お前だけ幸せなのはずるい」
と言い放った
その言葉は感染するように広がり
彼はたった一人の悪者に仕立て上げられた
たった一人の優しき人は
たった一人の幸せな人は
皮を剥がれ 肉を裂かれ
臓を引き出され 骨を切られて
たった一人ぼっちで
無残に死んでいった
たった一言の
たった一人の言葉で
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