第173回『共通点』→落選
あなたを一目見て、私の心は雷に打たれた。
そして悟ったの。この人に出会う運命だったと。
君を見た瞬間、僕の脳裏に君の人生が浮かんだ。
どんなあだ名で、どれほど苦労して育ったか。前世からの縁に導かれるように。
だから僕は声を掛ける。
「あの?」
「ええ」
彼女もすぐに悟ったようだ。運命的な出会いを。
「突然ごめんなさい。でも初めてじゃないような気がして」
「私もそうなんです」
静かに微笑む彼女。
その姿は聖観音様のようだった。
「あなたは神々しい。いや、決して嫌味なんかじゃないです。なぜなら僕もずっと苦労してきたから」
「ええ、わかりますとも。あなたも素敵です。私は初めて、自分のことが好きになれるような気がしています」
「僕もです。僕もなんです!」
感極まった僕は、両手で彼女の手を握っていた。
彼女も涙を流しながら、手を握り返してくれている。
「手術なんてしなくて良かった。初めてそう思いました」
「私もです」
運命を憎み、こんな姿に産んだ親を憎んだ。
その呪縛からの解放を分かち合える人に出会えたことが嬉しかった。
「何度、このほくろを取ろうと思ったことか」
「私だって。この額の真ん中にある大きなほくろを」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます