第173回『共通点』→落選

 あなたを一目見て、私の心は雷に打たれた。

 そして悟ったの。この人に出会う運命だったと。


 君を見た瞬間、僕の脳裏に君の人生が浮かんだ。

 どんなあだ名で、どれほど苦労して育ったか。前世からの縁に導かれるように。

 だから僕は声を掛ける。

「あの?」

「ええ」

 彼女もすぐに悟ったようだ。運命的な出会いを。

「突然ごめんなさい。でも初めてじゃないような気がして」

「私もそうなんです」

 静かに微笑む彼女。

 その姿は聖観音様のようだった。

「あなたは神々しい。いや、決して嫌味なんかじゃないです。なぜなら僕もずっと苦労してきたから」

「ええ、わかりますとも。あなたも素敵です。私は初めて、自分のことが好きになれるような気がしています」

「僕もです。僕もなんです!」

 感極まった僕は、両手で彼女の手を握っていた。

 彼女も涙を流しながら、手を握り返してくれている。

「手術なんてしなくて良かった。初めてそう思いました」

「私もです」

 運命を憎み、こんな姿に産んだ親を憎んだ。

 その呪縛からの解放を分かち合える人に出会えたことが嬉しかった。

「何度、このほくろを取ろうと思ったことか」

「私だって。この額の真ん中にある大きなほくろを」

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