第161回『テーマは自由』→落選

「新製品のテーマは『自由』だ」

 開発主任の宣言に、ラボはざわついた。

「自由って、行動パターンが、ですか?」

「ペットロボットなのに?」

 ざわつくのも無理はない。前作で、飼い主に好かれる行動パターンを散々ラボメンバーに要求してきたのは、開発主任その人なのだから。

「これは社長からの命令なのだ」

 前作の動きが動物そのものだったことに驚いた社長は、極秘プロジェクトを発動させた。

「ネコのように社会に溶け込ませる」

 日本ではそんなに需要は無いかもしれない。が、世界は違う。人々に気付かれることなく目的を遂行できるツールを、権力者や富豪は欲していた。


 一年後。

「社長。ようやく試作機が完成しました」

「どれどれ? おお、これはすごい。まさにネコそのものじゃないか!?」

「我が社のAI技術とメンバーの努力の賜物です」

「よし、一ヶ月後に実証実験だ。警察や自治体には内緒だから、失敗は許されないぞ」

「わかりました、社長」

 そして一ヶ月後。

「なんだ、あのぎこちない動きは!? 試作時の滑らかさはどうした!?」

「それなんですが、よりネコらしくなるよう思考パターンも『自由』に設定したところ、ネコと思われることを急に嫌がりまして……」

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