Section25 静寂の夢

 「そうね、もうちょっと落ち着いたらにしよう。その時まで電話待ってるから」


 電話口から聞こえてくるサユの声は、嫌なくらいに落ち着いていて、なんだかその声に隠された真意みたいなものに、僕は少しだけ不安になった。


 「うん、ごめん。今はまだ……」


 「いいの。急ぐ必要なんてないんだから。……大丈夫。大丈夫だから」


 いくら彼女が「大丈夫」と言ったところで、僕は一切安堵の念を抱くことなんて出来ないままだった。


 纏わりつくのは不安ばかりで、僕にだって元々はあったであろう安心の念は、ゆっくりと、だけど急速に削ぎ落とされていった。


 「じゃあ、その時に」


 「ああ、その時に」


 僕はそれから言葉を切った。


 そして静寂の中に置いていかれる。いつまでも静かな、静寂の世界。


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