section21 どうしても、その場所で。

 イチヤが轢かれたその場所には、枯れ切った花が置かれ、もうその場所全てが枯渇しているように思えた。


 もちろん、イチヤの存在までも。


 「もう10年も前になるのか……」


 一緒に来ていたトウヤは、しみじみとそんなことを口走る。


 「俺たちは随分と大人になっちまった」


 そう自分で言っていると、なんだか変な感覚に襲われる。


 俺らはあれから10年の時を経たけど、イチヤはあの時のままなのだろうか。


 まだ中学生だった、あどけなさの残るあの笑顔のままなのだろうか。


 「イチヤはいいな。ずっとあの時のままでいられるんだから」


 俺がそう言っても、トウヤはその言葉には応えなかった。応えるかわりに、こちらを向いてただ静かに笑っていただけだった。


 寒さの染みる1月は、もうすぐそこまで来ている。


 吐く息は白く、耳はもう既に麻痺しているようだった。


 「また来年な」


 そう言いながら、俺たちはその場所を離れていった。


 僕たちは未だに信じられないのだ。イチヤが事故で死んだなどということを。


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