Section14 置き言葉

 一枚の紙切れ。


 ただ机に置かれていたその紙切れには〝ばいばい〟とだけ書かれている。


 「ああ、そう……」


 不意に漏れた言葉は、誰に届くはずもなくただ僕の中だけで消化された。


 サキからの置き言葉だ。それは分かる。


 だけど、どうして僕は別れを告げられなくてはいけないのかが分からないままだった。


 昨夜、少し口喧嘩をしただけじゃないか。ただそれだけのことじゃないか。


 たったそれだけのことで、僕はこういった処遇を受けなくてはいけないのか。


 そして、たった一枚の紙切れ、たった四文字の言葉〝ばいばい〟で、こんなにも気分は落ち込んでしまうものなのだろうか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る