Section7 「夢の中で消えようよ」

 「夢の中で消えようよ」


 夢の中にいる僕に向かって、サユキはそう言った。


 「消えるってなに?」


 僕はただ、あまり深い意味も考えずにそう問いかける。

 その言葉にどんな意味が込もっているのか、暗に潜められた真実は何なのか。そんな事いちいち考えてもいられない。だってこれは夢なのだから。


 「ひとつ聞きたい」


 サユキは僕の目を真っ直ぐに見つめ、言葉を続けた。


 「もしかしてこれを夢だと思ってる?」


 なにを当たり前の事を聞いているのだろう、そう思った。だってそうでもなければ、僕とサユキが崖の先端に立っているなんてシチュエーションが考えられなかったから。


 「なにを言ってるんだ?」


 僕はサユキに聞いた。そう、心の底から、〝僕たちはなにをしているんだ?〟


 「約束したじゃない」


 サユキの冷たい言葉が胸に刺さった。それは紛れもなく、真実に近い痛みだった。


 きっとこの後に味わうであろう、真実の痛みなんかよりもっと深い痛みだったのだ。


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