方舟の女

 方舟は つがいしか 乗れないのか



 その日は、本当に来た。


ノアの方舟に乗る、様々な生き物のつがいが選ばれた。


私は、ヒトの代表になった。


傍らには、ヒトの男。ギリシャ彫刻のような、端正な男。



 だけれど、私は嬉しくない。


私のつがいが、あなたじゃないから。


なんで、つがいはオスとメスなんだろう。


あの男は、私を見て自身を屹立させているのだろうか。


私には、幼い頃からそれがおぞましいものに見えた。


いや、男と言うそのものが。



 さようなら、私の愛したヒト



 ヒトは、もう絶滅すると決まった。


この先私は、この男だけが。選ばれた最後のヒトの男だけが話し相手になるというのか。


こんなことなら、私は選ばれたくなかった。



 周りでは、他の動物たちが寄り添っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る