Artificial Age
汎野 曜
1. Artificial Age
Artificial Age 01: End of the world
1. Ecumenopolis
かつて人は光あふれる地上の世界に生きていた。核融合発電の実用化と軌道上太陽光発電によって人類が使用可能なエネルギーはほぼ無限となり、光輝く高度知性建築が林立する巨大都市はお互いに結びつき合って
果てしなく膨張する世界はしかしその一方で、手が付けられない程の政治腐敗と貧富の格差を生み出した。発達しすぎたコンピューターとロボットは人間を労働の世界から悉く駆逐し、ただ延々と家畜のように生かされ続ける大多数の貧民とごく少数のテクノクラートに分断された社会は自らの歪みに耐えきれず自壊しつつあった。
2. The Akashic appears in the world
「それ」は22世紀の終わりごろに作られたと考えられているが、正確にいつ作られたのかは最早定かではない。気が付くと人類は破綻した民主主義と資本主義に愛想を尽かし、いつの間にか自らを統治するためのシステムをコンピューターに委ねるようになっていた。
「それ」は複数の呼び名によって呼ばれているが、かなり早い段階で<アカシック>と自らを呼称したとされている。史上初めて人間の脳構造を電脳空間上にほぼ完全に再現した
その集合自我は拡大を恐れず、数年後には数千人に及ぶ選ばれた人間の頭脳と自らを接続する事で巨大な集合知性を構成し、合理的統治の名の下に複数の国家を治め民族を治めた。
<アカシック>はかなり早い段階でその自意識に致命的なバグを発生させていたとコンピューター史学者たちは推測している。善き知性による善き統治が凄まじい量のバグとエラーに悩まされ暴走を始めるまでにはさほど時間は必要なかった。昼夜を問わず
3. The end of the world
その後<アカシック>が人工知能によって操作される無人戦闘兵器群を大量生産し始めユーラシア大陸の東半分と東南アジアからオセアニアにかけてを虐殺と殺戮の海に飲み込み始めると、人類社会はしぶしぶながらも対応に着手した。
当時既に極度の軍事国家化が進んでいたいくつかの先進国が主導的役割を果たし、人類社会の軍事力がアカシック戦役のために集められたが、国家の中枢をハッキングされておきながらそれでも権力争いを続けようとする人類と、集合知性によって指揮される無人戦闘兵器の集団では争いの趨勢は火を見るより明らかであった。最終的には核兵器の使用も提案されたものの、大規模な核融合炉を数十機備えて稼働する量子コンピュータとバイオコンピュータの集積基地に核兵器を撃ち込めば地球は破滅の定めを免れず、及び腰の人類社会首脳部が果ての無い議論と会議に時間を空費している間に、人類はその殆どの居住地域を無人兵器に占拠されるに至った。
4. "Exsilium"
旧北米大陸の東端を最後の地と頼んで大挙流入した難民たちがどうなったのか、その詳細な状況は最早どの歴史書にも定かではない。幾つかの断片的な記録を合わせて考えると、混迷を極めた難民たちは旧人類政府の無能な権力者たちを排除した後にその学識や能力によって二つのグループに分かれて行ったと考えられる。
一方は少数の
対照的に知識にも技術にも持ち合わせがない貧民たちはただ襲い来る無人兵器による死を待つのみであったが、唯一残されていた大深度地下掘削用の大型土木プラットフォームの起動に成功した指導者の出現によりその多くが大深度地下空間に逃れるに至った。初期の無法状態を経て数年後にはUUUが設立され大規模な地下都市開発が始まるも、複数の都市でその草創期から紛争が絶えず発生し続けた。地下世界の住民たちはアカシックの
こうして23世紀末に人類が遥かな天空の果てと地下に逃げ延びるまでに、無慈悲なる無人戦闘ロボットに殺戮された人類の総数は100億人を超えるとされ、辛うじてその命脈を保った数千万人の人類も休む間もなく<アカシック>の追撃から逃れる日々である「血の時代」、そして人類同士の不和から再び戦争の始まる「鉄の時代」へと突入してゆく事となった。
Ayela, R. et al. Exsilium from the ecumenopolis. (3986).
Benait, D. S. W. The Human machine "Akashic". (3621).
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