2
「順番、は。マカロンからのクッキー、ね」
まずは分量を量らないと。と【アイテムボックス】から最後に取り出されたのはおよそ00.01gまで量れるデジタル式の秤だった。
それも迷宮品であると咲也子から聞いて、迷宮はキメラに対して甘いんじゃないかと遠い目をしたティオヴァルトには気づかず。咲也子は平らな調理台の上にそれを置いて、用意しておいたガラスの皿に量ったものを乗せていく。
咲也子がちょこちょこと動いて用意したそれをティオヴァルトが2つの調理台の上にわけていく。今日使用申請を出しているのは咲也子たちだけであるので、実質的に貸し切り状態であるからだ。
「これで最後か?」
「クッキーのお砂糖70g、ね」
はい、とティオヴァルトに角砂糖を14個入れたカップを渡して、とりあえずの計量は完了だった。咲也子は2つの調理台にわけられた材料たちを眺める。
ティオヴァルトを信用していないわけではないが、頭の中にあるレシピと材料が合っているかを確認しつつケープを脱ぎ、ワンピースの袖をまくる。
縫い跡だらけの手指に息を飲みつつも何も聞かずに袖をまくって、ひもで縛ってくれるティオヴァルトがありがたかった。
道具と一緒に出しておいた白いエプロンを身に着ける。ティオヴァルトにも普段は
「おい、それ・・・」
「うさちゃんな、の。かわいいで、しょ」
「まあ、似合うな・・・」
「どんな汚れもつかないエプロ、ン。これも迷宮品なの、よ。‘傲慢‘がとってきた、の」
「迷宮・・・」
白い腰ひもを後ろで結ぶと、上半身でウサギのシルエットをとるエプロンにティオヴァルトは思わず絶句した。似合っていないわけではない。むしろ似合っている。ものすごく。だからこそ言いたかった。
‘傲慢‘の
胸の奥から感じた、昨日の子猫の時に感じた時と似た衝動のままに叫びそうだったが、ティオヴァルトは何とかそれを飲み込んだ。
下を向いて何かに耐えるように口を結んでいるティオヴァルトを不思議そうに見ながら咲也子は分けておいた卵を割って、卵黄と卵白にわける。これで下準備は完了だ。
「まずはマカロンの種を作る、の。アーモンドプードルと粉糖をあわせてふるって、卵白と一緒に均一になるまで混ぜて、ねー」
「わかった」
ティオヴァルトに練るのを任せて、咲也子はイタリアンメレンゲを作ることにした。幸いレンジがあったため火を使わずに作れるようで、時短のためにもそっちを選んだ。
砂糖と水を耐熱容器に入れて加熱し、その間にハンドミキサーを使って作っておいたメレンゲに混ぜていく。ハンドミキサーを見たことはあるものの使ったことはなかったティオヴァルトが騒音とも言っていいその音に肩を跳ねさせていた。
2つのボウルにそれぞれココアパウダーと苺パウダーを入れて、そこに3等分にしたメレンゲを1欠片ずつ入れていく。
「ティオ、メレンゲの中に入れる、の。混ぜ、て」
「ん。・・・なんだこれ」
「ピンクのが苺で、茶色のがココア、何も入れてないのがノーマル、で。マーブルマカロンにする、のー」
「いろんなのがあるんだな」
ティオヴァルトの練っていた生地を3等分してそれぞれのボウルの中に入れていく。卵白をつぶしつつ艶が出てリボン上に落ちるようになるまでまた練る。興味深そうにのぞき込んでいたティオヴァルトにボウルを渡すと、咲也子は同時進行でクッキーを作ることにした。
バターに砂糖を白くなるまで混ぜあげると、そこにマカロンで残しておいた卵黄を落としこみ、これまたしっかり混ぜる。そこに小麦粉をふるい入れてさっくりと切るように混ぜていく。混ぜ合わせた生地を2等分にして棒状に整形し、冷凍庫に入れたところでティオヴァルトから声がかかった。
「できたぞ」
「ん。次は袋に入れて絞る、の」
マカロナージュと呼ばれる工程がきちんとされている状態なっているかを確認して問題になくされていることがわかったため次にうつる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます