第31話 【振り込め詐欺】の手口

 かかってくるのは息子や孫のなりすましだけではない。警察署の生活安全課や銀行協会を名乗るパターンも最近では増えている。


「振り込め詐欺の犯人を逮捕して調べていましたところ、あなたの銀行口座が犯行に使用されていました」

「ご主人が痴漢をしたので、今、事情を聴いています」


 こんなことを言われれは、一瞬慌ててしまうだろう。そこに間髪入れずに不安を煽るようなことを言う。


「あなたの口座が犯人に使用されていたため、財産が差し押さえられることになります」

「痴漢をした相手の女性が訴えると言っているので、示談に持ち込んだ方がいいと思いますが」


 財産を差し押さえるだの訴えるだのと言われたら大体のお年寄りはパニックになって正常な判断ができなくなる。そこにとどめだ。


「差し押さえられる前に、今すぐお金を下ろしてください」

「すぐに示談金を支払わないと裁判になりますが」


 考える時間を与えないようにして次々と捲し立てる。


 俺なんかは頭悪いから息子役しかやらせて貰わなかったけど、警察役や弁護士役の連中なんか、傍で見ていてもあまりのえげつなさにため息が出るレベルだ。


 とにかく俺から言えることは一つ、「落ち着いて」。

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