ねえ……どうして?
仁志隆生
燃えていく……
「こ、ここは?」
そこは壁も床も真っ黒で小学校の体育館くらいの広さがある空間だった。
男は気がつくとそこにいた。
「俺はたしか家で寝ていたはずだが、いつの間に?」
男が周りを見ると大勢の人がいた。
千人位いるだろうか。
皆どうしてここにいるのかわからないようだった。
「出口が見当たらないし、窓もない」
男がそう呟くと
突然辺りが熱くなった。
これはまるでオーブンの中にでもいるような感じだった。
そして炎が出てきて人々の体が燃え始めた。
ギャアアアアーーーー!
熱いよーーーー!
助けてくれーーー!
人々は体が燃えたまま壁を叩いたりなんとか消そうと転がり周ったりしていた。
「ぐ、このままじゃ皆焼け死んでしまう」
「そうだよ~、皆焼け死んじゃえよ」
「え?」
男が振り返ると、そこに眼鏡をかけて黒い服を着た十二、三歳くらいの少年がいた。
「え、あ!?」
男はその少年を見て驚いていた。
なぜならその少年はまるで何事も無いような感じでそこに立っていた。
こんな状況でも体が燃えもせずに。
「キャハハハ。どうしたの~?」
「……もしかして?」
なんとなくだがここに皆を連れてきたのはこの少年では? と男は思った。
「そうだよ。僕が全員ここに連れてきたんだよ~」
「何故だ!」
「さっき言ったじゃん、全員焼け死んじゃえよ、って」
「ふざけるな! 何で俺達が焼き殺されなければいかんのだ!」
「ん~? あんたらがさんざん焼き殺してるからだよ」
「は? 俺はそんなこと」
「してるよ、あんたの仕事って何?」
「……あ」
そうだ俺は。
動物達の殺処分を……
「だが、そうしないと」
「そうしないと何? 人間が困るとでもいうの? そんなの人間共が勝手に決めたことでしょ~?」
「う」
「ねえ……どうして勝手に決めるのさ~。人間がそこまでして生きる価値があるとでも思ってんの~? 人間さえいなければ動物達は平和に暮らせるのにねえ。悪いと思ってんならさ……あんたらこのまま焼け死ねよ」
「誰が焼け死、うぎゃあああああ!」
男は一瞬のうちに燃え上がり、炭と化した。
「どいつもこいつも勝手だよね。……ねえ……どうして?」
少年は燃えていく人々を見ながら呟いた。
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