魔女喰い(クリスマス前の憂鬱)
今年もまた始まっているハッシュタグイベント #Xmas2015 思えばあの時はまだ何も分かっていなかった。今も何かを分かっていると言うわけでもないのだろう。
ジェイソンは目を血走らせてこう言った。
「心夜(しんや)さん。俺が魔女をぶっ倒してやるよ。そして取り戻そう。お互いの彼女を」
とは言え、俺の彼女なのだろうか?
電話で話していただけという関係で、彼女と言って良いのだろうか?
いつか会えると思っていた人とは、もう会えないのか?
俺が一方的に、そう、一方的に。
ジェイソンだってそうだ。きっと一方的な思い込みなのだろう。
それでも、彼の中では俺と会ったことで何かが吹っ切れてしまったかのように、俺との話しを早々に打ち切って帰っていった。
俺としては、何も得るものがなかった久しぶりの出会いになった。
思えば去年のクリスマス。そう、このベンチで彼と話したのが分岐点だったのかもしれない。
今年も俺の心を一人分取り零して、クリスマスが始まる予定だ。
俺だけじゃないのだろう。似たような人がたくさんいる。そう思うことだけが自分を救ってくれていた。俺は一人じゃない。ジェイソンも似たようなものか。
いや、彼には強く思える人がいる。
その点では彼は幸せなのかもしれない。
俺はというとどうだろう。誰かに思われていたり、誰かを思っていたりするだろうか。
サンタクロースは俺に何をプレゼントしてくれるだろう。
人工知能の気の利いたロボットなんてどうだろう?話し相手にはなりそうだ。
家に帰ると窓の外にネオンの明かりがチカチカと眩しい。今年はいつにも増して明るく輝いているように見える。去年も一昨年も、まだ節電ムードが響いていたのだろうか。
今年は一段と輝きを取り戻したようだ。
多くの人々にとっては、喜ばしいことなのだろうけど、静かになった街が俺は好きだったんだ。
思わず部屋を飛び出して、俺は去年と同じ場所に腰をおろしていた。
そんな時、とても美しい女性が近づいてきて、俺の横にちょこんと座った。
俺は目を奪われ、ガン見していた。目を離すことが出来ない美しさというのは、この人の為にある言葉なのだろう。
誰かと待ち合わせなのだろうか。目が離せない俺に対し、女性が目を合わせてくる。
蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる俺が、デレッとした顔を隠すように空気で顔を洗った。
その一瞬、目を離した時に女性は、人混みの中に消えていった。
すぐに追いかけて、「ねえねえ。誰かと待ち合わせ?」なんて気軽に話しかけることが俺には出来ない。拳を足に叩き込み、俺の足を呪うことで精一杯だった。
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