魔女喰い(ジェイソン)

12月、俺は車いすの男に会っていた。

あの時見せられた佐知の写真に衝撃を受け、俺の耳にはその後彼が何を話していたのかすら記憶に止めていなかった。車いすの男から受け取った佐知の写真を、これまで取った写真のアルバムに大事に挟み、時間が許される限り、何度も何度も佐知との思い出のアルバムを開いたりしながら、そろそろサクラが咲くのだなとぼんやりと考えた。

4月に佐知と取った写真には、綺麗な桜並木の道が写っていて、今年もここに行けば、佐知に会えるのだと呆然と想いを募らせた。

アルバムに映しだされた佐知の笑顔を見るたびに、切なさがこみ上げてきた。

最期に見た佐知の後ろ姿を追いかけるように、あの時一緒にいた魔女を俺は追いかけている。

世間から見たらストーカーでしかない、それでも俺の、今の生きる目的となっている。

魔女は実在した。その存在を知っているのは俺と、車いすの男の二人だけらしい。

俺は、魔女のいつも出入りしているマンションを知っている。

あの魔女を殺すのは俺の役割だ・・・

佐知を殺したあの魔女を、俺は許さない。

車の座席から身を隠して魔女が無防備になる瞬間を追いかける。

早く出てこい。魔女め!

しかし、マンションから出てきたのは、佐知だった。

あの日亡くなったと報道されていたはずの佐知が今、目の前に現れた・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る