第9話

 由真と真理恵は手を繋ぎあい、冷え切ったアスファルトを蹴り、『殺戮者』から逃れるために再び走り始めた。

 彼女たちの後方には、首に『殺戮者』が投げた木の枝が突き刺さったまま、いまや痙攣が完全に止まった白鳥学の死体があった。

――白鳥さん……白鳥さん……

 由真は自分たちを吸い込むような闇しか続かない視界の中で、ギュっと目をつむり、真理恵の手を一層強く握った。由真がもう片方の手に握りしめている、白鳥学が死ぬ前に自分に託した携帯は、彼の血で濡れていた。

 彼の惨い死の瞬間を思い出した由真の瞳からは、また止まることのない涙が溢れ出る。

――白鳥さんまでもが殺された。”あいつ”は私たちを嬲り殺しにする気だ。男1人と女2人……だから、”あいつ”は力の強い男である白鳥さんから先に殺したに違いないわ……

 由真は、姉に懸想する白鳥学に対しては彼の外見以外に好印象を持てなかった。だが、彼が1人だけ先に走って逃げることができたのに、自分たちを連れて一緒に逃げようとしてくれたことを分かっていたため、胸の苦しさが重なり合うように増していった。

 そして、隣を走る真理恵の肩には『殺戮者』の投げた木の枝が刺さったままであった。真理恵の傷口から流れる血が、由真と真理恵が流す涙が、後ろに尾を引き、闇の中で線を描くように流れていった。

 先ほどまで聞こえていた、深淵に差し込んだ一筋の希望であるサイレンの音はとっくに止まっていた。だが、今、彼女たちが必死で駆けるこの道路には、自分たちを助けに駆け付けてくれたはずだと信じていた、その希望の姿は現れなかった。

 突如、ふらついた真理恵が、そのまま道路に倒れ込みそうになった。由真は慌てて、手を伸ばし、全身で真理恵を受け止めた。熱い真理恵の体が自分に重くのしかかってくる。彼女の心臓が脈打つ音までが、由真へと伝わってきた。

 止まらぬ出血により、真理恵のその頬は、この闇の中でも分かるほど、紙のように白くなっていた。

「姉さん」

 真理恵は、由真よりも数段苦し気に息をしていた。「早く、一刻も早く手当をしなければ」「あんな真っ白できれいな姉さんの肌に傷が残るなんて」「素人判断で枝を抜いたりするともっと酷い血が出るかもしれない」「ここで立ち止まってしまったら、あいつは――」と由真の思考は、パズルのピースのように、散らばったり、集まったりを繰り返していた。

 由真は真理恵を支えたまま、思い切って後ろをバッと振り返った。

 あの『殺戮者』の姿も、『殺戮者』に殺され道路に転がっている白鳥学の死体も見えなかった。ただ、由真の視界の遥か向こうには、町が発してる夜の明かりだけが別世界のように浮かびあがっていた。

 あの夜の明かりの元にいる人々は、車で走らせればわずかな距離であるともいえるこの地帯で、何人もの人々が惨殺され、そして、今、この時にも殺されようとしている者がいるとはきっと思いもしないに違いないだろう。

 由真は空を飛べるものなら、あの明かりの元へと姉を連れて飛んでいきたかった。安全な場所へ、『殺戮者』の手が届かない場所へと。由真も真理恵も、ほんのわずか数時間前までは、現状に様々なトラブルを抱えてはいたものの、あの明かりの元で生きている人々と同じであった。あんな『殺戮者』のような化け物に、目の前で何人もの人を殺され、自身も命を狙われることなど、思いもしていなかったのだから。

「……由真、私を置いて早く逃げて……あなた1人なら、きっと逃げられるわ……」

 真理恵が、息も絶え絶えに喘ぐように由真の耳元で言った。

「姉さん、なんで、どうしてそんなこと言うのよ! どうしてよ!」

 由真は真理恵にしがみついた。

――姉さんを置いて私1人で逃げることなど絶対にできやしない。でも、これ以上、姉さんを走らせるのは……

 由真が固く握りしめている学の携帯は、学の血と由真の汗にまみれていた。助けを呼びたい。けれども、この暗闇の中、学に託されたことの携帯を使うこと――それは『殺戮者』に自分たちの居場所を闇に浮かび上がらせるがごとく、知らせてしまうことと同義であった。

 涙を血で汚れた手でぬぐった由真は、見覚えのある黒いシルエットがぼんやりと見えることに気づいた。

――あれは……

 由真たちは手を取り合い、小走りでそのシルエットへと近づいた。

――やっぱり、義兄さんの車だ!

 義兄・吹石隆平のスポーツカーであった。車体がもともと黒色であり、人通りが極端に少ないこの道路の路肩に止められていた彼の車は、闇に溶け込むように、そこにあった。

 そして、彼の車のキーは刺さったままであった。

「姉さん!」

 由真の声を聞いた真理恵も、この車が動かせるかもしれないということ分かった。由真は運転席のドアを、真理恵は後部座席のドアを開け、車内へと滑り込んだ。

 由真は即座に車のキーをひねり、エンジンをかけた。この車も『殺戮者』によって、パンクさせられていることなど知らない由真たちは、再び自分たちの目の前に垂らされた細い希望の糸に触れることができたと思ったのだ。

 車内は、隆平が愛用していた煙草の匂いがほのかにした。車の中には、左腕を失った吹石隆平の死体はなかった。けれども、彼の飲みかけの飲料水と助手席に無造作に置かれた財布。隆平がこの場所で『殺戮者』に襲われたのは、明白であった。そして、車外には、腕を切断された隆平のおびただしい血がアスファルトに飛び散ってもいたが、闇の中にいる彼女たちはそれに気づくことはできなかった。

「隆平……」

 後部座席の真理恵は口元を押さえ、嗚咽をこらえた。自分にも死が襲い掛かってきている最中なのに、最愛の者の惨たらしい最期をやはり彼女は想像せずにはいられなかった。

 エンジンがかかった。車のライトが闇を切り裂くように、辺りを照らし出した。グッとハンドルを掴み、アクセルを踏み込んだ由真であったが――

「姉さん! 伏せて!」

 突如叫んだ由真の声に、機敏に反応し即座に座席下へと伏せた真理恵の頭上でバックガラスが粉々に砕け散った。『殺戮者』の投げた石によって、粉々になったガラスが真理恵の頭上へと降りかかる。運転席の由真にもその飛沫は飛んできた。

 グッとアクセルを踏み込んだ由真が、バッグミラーに見たもの、それは『殺戮者』がこの車に向かって石を投げる姿であったのだ。

 この衝撃により、ハンドルで胸の上あたりを強く打った由真であったが、苦しさと痛みを押さえて、後部座席の真理恵を振り返った。  

「姉さん……」

「由真……」

 粉々になったガラスの中にいる真理恵には、肩にあの木の枝が突き刺さっていること以外には、”大きな”怪我はないようだった。

――一刻も早く逃げ……

 決意した由真が再びアクセルを踏み込んだその時だった。

 割れたバックガラスの向こうより、細長い棒のような青い腕が手を伸ばし真理恵の首を捉えたのだ!


「やめてえええ!」

 再開されゆく地獄の殺戮に、真理恵ではなく由真が絶叫した。由真の目の前で、『殺戮者』の異常な程、細い腕に首根っこをつかまれた真理恵は、外へと引きずり出されていった。

「お願い! お願いよ!」

 由真は喚きながら、運転席のドアより転がり出た。地面に落ちた由真の全身に痛みは走った。だが、由真は立ち上がり―

 真理恵を車より引きずり出した『殺戮者』は、アスファルトの道路より離れた道端の茶色い湿った土の上に、真理恵を放り投げた。尻餅を着いたままガクガク震える真理恵と、その彼女の前で仁王立ちとなっている『殺戮者』の姿を、満月と車のライトが照らし出していた。

――駄目よ! 絶対に姉さんを殺させやしない!

 由真は獣のように叫びながら、『殺戮者』のその背中へと飛び乗った。

「逃げて! 早く逃げてえ!」

 真理恵に向かって叫ぶ由真の肌に、『殺戮者』の爬虫類の皮膚のような冷たくて気味の悪い皮膚の触感が伝わってくる。由真は全身を鳥肌立たせながらも、姉への死の刃を絶対に振りかざせまいと、必死で『殺戮者』の背中にしがみついた。

 けれども、由真が『殺戮者』の死の刃を止めることができたのは、10秒にも満たなかった。『殺戮者』が身を振るい、小さな由真の体を自身より振り落とした。それにより、地面に落下した由真のパンツのポケットから、白鳥学の携帯が離れた地面へと飛んでいった。

 『殺戮者』は仰向けで地面に横たわっている由真へと、ツカツカと歩み寄り、彼女の腹を力いっぱいにギュっと踏みつけた。由真は、うあああ、と呻き声を発し、苦悶に身をよじった。

 由真のその様子にニタニタして涎を垂らした『殺戮者』は、両の瞳をさらに爛々と輝かせた。今から由真をいたぶって殺すことの喜びのように――

 由真は自分の口の端から、涎ではない粘り気のある液体がつたうのを感じた。二重三重に重なり合う視界の中、下から自分を踏みつけている『殺戮者』を見上げる由真には、青い皮膚の上で黒々と茂っている縮れた陰毛と、割れ目の奥にある赤く膨れた陰核までもが見えていた。

「由真ああ!」

 真理恵が泣き叫び、後ろから『殺戮者』に体当たりした。わずかに――そう、ほんのわずかに体勢をぐらつかせた『殺戮者』は、真理恵にギュインと顔を向けた。

 『殺戮者』は真理恵に向かってバッと両手を伸ばし、やわらかな髪の毛を片手で掴んだ。そして、もう片方の手で――

「ああああーっ!!」

 真理恵の肩に自分が突き刺した木の枝を、彼女の体より強引にズズッと引き抜いたのだ。


 真理恵の血をたっぷりと吸った木の枝が地面へと落ちた。木を引き抜かれた真理恵の傷口からは、血がドッとあふれ出て、由真から見える彼女の白いシャツの背中はさらに赤く染め上げられていった。

「姉さんんん!」

 由真は地面に転がったまま、真理恵に向かって手を伸ばした。真理恵は歯を食いしばって痛みをこらえ、『殺戮者』の注意を自分に向けておくために、すなわち妹を守るために、決して倒れまいと。


――ソウ、ソレデイインダ、クルシメ、クルシムンダ、ワタシハモット……

 

 真理恵の恐怖と痛みで歪んだ顔を見た『殺戮者』は、嬉しそうに奥歯をカチカチと鳴らした。



 その頃――

 崖下の炎にくすぶっていた”事故車”の、おそらく転落箇所の少し手前の地点に駆け付けた1台のパトカーが気になり、運転席の仲吉浩太は少し身を乗り出して覗き込もうとした。

 だが、後部座席からの「あいつら、一体、何やってんだ?!」という、八窪卓蔵のまるで焦りと苛立ちがプレスされたような声を聞き、自分が叱責されたわけでもないのに、つい肩をすくめてしまい、慌てて視線を進行方向に戻した。軽く息を吸った後、浩太は恐る恐る切り出す。

「お嬢様方、お2人とも電話に出られないんですか?」

「真理恵も、由真も、どっちの携帯もつながらないんだよ」

 卓蔵のその言葉の語尾には、ピリピリとした苛立ちをより強く感じられた。

「……もしかしたら、お手伝いが忙しいのかもしれませんよ。ご心配でしたら、ペンションの固定電話の方にかけてみたら、いかがでしょうか?」

 その浩太の言葉に、「そりゃあ、そうだな」と卓蔵は小さく呟いた。もう一度、肩をすくめた浩太は、やれやれ、と卓蔵に気づかれないように息をついた。

――普段は仕事の鬼っぷりを見せている社長も、娘のこととなると途端に判断力が鈍るんだよな。同一人物とは思えないぐらい……しかし、娘ってそんなに可愛いもんなのか? とっくに成人し一度結婚までした娘と成人間際の娘、小さな子供じゃあるまいし心配しすぎだろ。

 浩太の耳には、卓蔵の携帯が発している呼び出し音がかすかに聞こえてきた。先ほどまで、うるさいぐらいに聞こえていたサイレンはとうに止まり、今は夜の闇の中を突き抜けるように走るこの車の走行音も、浩太の耳はしっかりと拾うことができていた。

――社長は多分、あのちょい悪親父もどきの多賀のおっさんに、娘の元夫があたりをうろちょろしていないか、矢継ぎ早にまくしたてるに違いない。多賀のおっさんも困るだろうな。

 卓蔵と多賀准一のその様子を想像してしまった浩太は、思わず笑みを浮かべてしまった。

「……おかしい。なんで、ペンションに電話しても誰も出ないんだ?」

 卓蔵の呟きに、浩太も「おや?」と思った。

「多賀が出れないのなら、笹山や他の者が、誰かが電話には出るはずだろう?」

 多賀准一のやや野太い声も、笹山之浩のいつも陽気な声も、深田季実子の妙に華やいだ声も、電話口からは聞こえず、卓蔵の耳元にはコール音が鳴り響いているだけであった。

 浩太の背筋にも嫌な予感が一本の線のように走った。

――社長の言う通り、確かにおかしいな。あのちっさいおっさんも、ぶりっこおばちゃんも誰も電話に出ないなんて……客相手のペンションだぞ? よっぽどのことがない限り、あれだけ長く電話を鳴らしていたら、誰かが電話に出るはずだ。

 卓蔵も浩太も想像だにしていなかった。

 由真と真理恵の携帯は、彼女たちがペンションの手伝いに集中するため、自室に保管しており、卓蔵からの着信履歴を虚しく重ねて残していただけであったことを。そして、今まさに卓蔵からのコール音が鳴り響くペンションには、確かに人は残っていた。だが、誰一人として、卓蔵の電話に受けることはできなかった。すでに、「死者」となってしまった者たちは「生者」である卓蔵からの電話を受けることなどできやしない。

 静けさに満ちた夜の匂いと、犠牲者たちの生々しい血の匂いに満ちたペンションでは、コール音だけがただ鳴り響き続けていたのだ。

「白鳥……あいつも、何やってんだ?」

 ブチンと乱暴に電話を切った卓蔵は、白鳥学の携帯番号を電話帳より探し出し始めた。



 血だらけの震える体で、必死で『殺戮者』と対峙している真理恵の足元に転がっていた白鳥学の携帯がヴーヴーと振動した。携帯の画面に浮かび上がっている着信表示の「社長」という文字。それは、すなわち、彼女の父・八窪卓蔵からの着信であった。

 真理恵はふらつきながらも身をかがめ、その携帯を手に取った。

「白鳥?」

「……お父さん……」

「真理恵か? どうしたんだ?」

 部下の携帯にかけたはずなのに娘が出た。その上、娘の声の調子は明らかにおかしい――電話口で卓蔵が狼狽していることが真理恵も分かった。

 血にまみれた携帯を握りしめたままの真理恵の瞳からは、一筋の涙がつたう。

 それは、彼女はもう父の声を聞くのはこれで最後であると覚悟したためであった。



「真理恵! どうした? なんで、白鳥の携帯にお前が出るんだ? あいつと今一緒にいるのか?」

 携帯を握り、声を荒げた八窪卓蔵に、運転席の浩太もただならぬことが起こっているのを感じた。

 手の内の携帯に耳をくっつけている卓蔵には、電話口からの真理恵の弱弱しい声だけが聞こえた。

「……お父さん、白鳥さんは殺されたのよ……」

「白鳥が殺されただと?! 何だ? 一体、何を言っているんだ?」

「……隆平も多賀さんたちもお客様も殺されたのよ……でも、由真はまだ生きているわ……私はきっともう……」

 わずか数秒の沈黙。卓蔵は携帯をさらに強く自分の耳に押し当てた。

「真理恵! 返事をしろ! 返事をするんだ!」

「……お父さん……大好きよ……」

 これが卓蔵が聞いた娘・真理恵の最後の言葉であった。

 そして、電話口からは「姉さん!」という由真の絶叫が――!

「由真!? お前もそこにいるのか! 返事をしろ! 今、どこにいるんだ?」

 彼の問いかけに、2人の愛娘からの返事はなかった。ただ、何かが壊れるような音がし、電話はブチンと切れた。いや、何者かに切られたのだ。

 電話口から聞こえるツーツーという音が彼の耳に響き、額からは冷たい脂汗がドッと吹き出てきた。

「社長……」と、浩太がバッグミラーから卓蔵を見ていた。


「車を飛ばせ!」

「あの……」

「いいから、早く飛ばすんだ!」

 卓蔵の怒声に、アクセルをグンと踏み込んだ浩太も、いろいろな思いが頭の中で錯綜しているかのようだった。

――一体、何があったんだ? ペンションで何が起こったんだ? お嬢さんたちに一体何があったんだ? それにあの白鳥が殺された? あんな何もかも手に入れて、90や100まで生きて天寿を全うしそうな奴がか? まさか、上のお嬢さんの元夫がキレて、刃物でも振り回したっていうのか? それとも、客の中に異常者でも紛れ込んでいて……

 後部座席の卓蔵の荒い息遣いと身を振るわせている音が、浩太にも聞こえ始めた。

 卓蔵は携帯を握りしめたまま、頭を抱えるような格好で、とうの昔に信じられなくなっていた神に再び祈り始めていた。

――頼む。お願いだ……娘たちが殺されるなんて、そんなことあってたまるか! 真理恵、由真、お父さんがすぐお前たちのところにに行くからな。俺がお前たちを助けてやる……



 父・卓蔵とつながっていた携帯は、真理恵の手から叩き落とされ、あっけなく『殺戮者』に踏みつぶされた。携帯の液晶がパッと茶色い土の上に、飛び散った。

――姉さん! 姉さん!

 由真は『殺戮者』に踏みつけられた腹の痛みをこらえ、地面に這いながらも、真理恵への元へと向かおうとしていた。

 真理恵と『殺戮者』は先ほどと同じく、向かい合っていた。だが、ふらついている真理恵の背中の血の染みの面積はさらに広がっていき、醜悪な『殺戮者』の唇の端は耳へと近づき、そこからは涎が垂れ……

「やめてえええ!」

 由真の絶叫が夜の闇を切り裂くがごとく響いた。

――姉さん! 今、私がそっちに行くから……姉さんはこんなとこで、そんな奴に殺されたりなんかしちゃいけない! 絶対に!

 だが、由真の絶叫も、『殺戮者』の注意を向けることができなかった。


 真理恵は大きく息を吐き、覚悟を決めたかのように『殺戮者』にゆっくりとその背を向けた。

 涙がはりついた笑顔で、真理恵は由真を見つめていた。優しい聖母のような笑顔。由真が大好きだった真理恵の笑顔。真理恵に初めて会った幼き日から、由真はその優しい笑顔に――

「……由真……生きて……」

 唇を震わせながら、真理恵は最後の言葉を由真へと告げた。

 そして、彼女は唇を結び、静かにその瞳を閉じた――

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