12狂気からの脱出

もう 言葉は通じなかった


 女神のような優し気な女は自分の背に飛び乗って首を絞めようとしている


 振り返って黒目が大きくなり鼻孔が開き髪を振り乱してなにかを言っている


 渾身の力で振り払い自力で縄を切ったイムが自分の手を取った


  それから無我夢中で走った


 タイマツが焦げる匂い 暑いひどく暑い突然イムが雷に打たれたように固まっ


てそれから倒れた


  何が起こったのかわからずかがみこむと叫ぼうとしていた口から矢尻が出ていた


 もう完全にこと切れて即死だったのは間違いない


耳の近くに空気を切り裂く音が響いた


 悲しんでいる暇はなかった


 道は下り坂になっていて涙で濡れている眼には二十写しになったが生い茂った


木に隠れて全力で走った


 ボートを出すと浜辺でいつまでも喚き声が聞こえた


 ここは楽園ではなく地獄だった


振り返ると本当に小さな島だった

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