第4話 守り人修行


×××の守り人に、オレはなる!


どこかの主人公のような台詞を

コリスが ほっぺをふくらませて 叫んだ


×××が聞き取れなかったので、もう1度聞くと

う さ ぎ だった


うさぎの守り人 つまり うさぎの子守の仕事を 依頼されたんだ

コリスより うさぎの方が 大きくないかな


そのうさぎとは、うまれたばかりの白うさで

ご両親のうさぎさんたちが 急用で遠くにいかなきゃならなくて

急きょ預かることになったんだって

長旅に連れていくと弱ってしまうからお願いしますと


きっと コリスに頼んだというより

玻璃の音*書房だったら、柚子さんがいて安心って 思ったんだろうな


赤ちゃんのうさぎは、まだ てのひらにすっぽり収まる大きさで

1日のほとんどをねて過ごすような ちっちゃい白い毛玉

見守っていればいいレベルなんだね



奥の間に ふかふかの小さなベッドが置かれて

コリスはずっと見守っていた

すぅすぅ寝息をたてて そのかすかな音に合わせて

ふかふかのおなかが ふくらんだり ちぢんだり

淡いピンク色のみみが こきざみに揺れたりするのを

しあわせな気分で見つめていた


ゆるい空気が漂って

うっかりこっくりしたコリスが目を開けると

そこに うさぎの姿は なかった



びっくりして あちこち探すと

部屋の反対側で ころころ回っている うさぎ発見


まさかの 初のねがえり だった

しかも うれしくて 何度もくりかえしている模様

ああ、縁側の方に行ってしまうと落ちちゃうよ


大騒ぎで柚子さんのところに駆けつけるコリス

家中のクッションがかき集められ 城壁のように周りがガードされた


急に 門番のような険しい顔になるコリス

槍でも持ったら似合いそうな めったに見ないキリっとした顔


そのあとも 隙をみてはころがる 毛玉うさぎの

雪うさぎのようだった真っ白な毛は 見る間にねずみ色になり

ふかふかだった毛はぬけて みすぼらしくなってきた

オソルベシ、ネガエリ!



次の日の夜が更けてから、うさぎさんたちが帰ってきた

もうコリスは 精魂尽き果てて しっぽの毛並みもぼさぼさ


うさぎさんたちは すっかり変わり果てたわが子を見て

コリスさんを信じてたのにと つぶやいたとか


今はすやすや 平和にねてる こうさぎ

明日の朝めざめたら、うさぎさんたちにもコリスの苦労がわかるよ


おやすみ コリス

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る