ヒト戦記

東頭鷹綾

act0 光

眩暈にも似た感覚がヴンジョーを襲った。

血の匂いが辺りに充満している。屋外だというのに、ここまで血の匂いしかないなんて、いったいどれだけのヒトが血を流したのだろう。

ヒトだけではない。馬や猛獣の類、戦争に使われたあらゆる動物たちの血も、ここには流れている。それだけではない、ヒトではない、『彼ら』だって―

「・・・あぁ、***」

名前が、思い出せない。自分の口が、何かの名前とおぼしきものをつぶやくが、それが誰のものだったか、名前だったかすら、思い出せない。意味をなさないつぶやきは言葉にすらならず、うめき声のように空へ消えていった。

ヴンジョーは屍の山を越えて、歩き出す。

果てのない、屍の道。このまま歩いていけば、自分も彼らと同じところへ行けるのだろうか。ヴンジョーは朦朧とする意識の中で、そんなことを思っていた。

―誰かの呼ぶ声が  した


そこで、ヴンジョーの意識は途絶えた。


―選ばれたのは五人

―彼らの行く末に光あらんことを・・・・

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