第10話 旧校舎の幽霊

 オレはある時、旧校舎に幽霊が出るというウワサを耳にした。

 そして放課後、オレはウワサを確かめるため、1人で旧校舎に入った。校舎の中はぼろぼろだった。床はギシギシと唸りを上げており、いつ抜けてもおかしくない状態だ。


「あんた、こんなところで何してるの!!」


 突然背後から声をかけられた。振り向いたその時、頭に鋭い痛みを感じた。だが、痛みはすぐに消える。そして、目の前には幼馴染のアミがいた。


「何って調査だよ、調査!この旧校舎に幽霊が出るってウワサを確かめるんだ!」


 意気込むオレとは対照的に、アミはなぜか戸惑っている。でも、その顔はどこか嬉しそうだった。


「それより、おまえこそこんなところで何やってんだよ」


「あ、あんたがここへ入るのが見えたから、ちゅ、注意しに来たのよ!」


 そんなアミの言葉は無視し、どんどん先へ進むオレ。


「ま、待ちなさいよ!!」


 アミが後を追ってくる。


「何だよ、早く帰れよ」


「やだ!」


 オレはさらに奥へ進んだ。

 アミは怖いのか、オレの腕にしがみ付いてきた。


「なっ!?は、離れろよ」


 戸惑うオレにアミは。


「もう少し、このままでいさせて・・・」


 オレはドキッとしてしまう。何だか懐かしい気持ちになった。

 その後、階段を上り、上の階も調べてみたが幽霊なんてどこにもいなかった。もうすぐ下校時刻になる。オレは幽霊なんていないという結論を出し、来た道を戻ることにした。隣を見ると、アミは先ほどからずっと顔を伏せていた。

 入り口の近くまで来た時、突然アミが立ち止まった。声をかけようとすると、それよりも早くアミの口が開いた。


「旧校舎探検、楽しかったね!」


 そう言って顔を上げたアミは、泣いていた。こぼれた涙がつややかなほおらす。


「お、おう。そうだな。結局幽霊なんて出なかったけど・・・」


 アミがなぜ泣いているのかわからず、オレは戸惑ってしまう。


「わたし、あんたのこと忘れないよ」


 最後に笑って見せると、アミは校舎を出て行った。

 泣きながら走り去るアミを追って、オレは校舎を出ようとした。その時、再び頭に鋭い痛みを感じる。そして、オレは全てを思い出した。


「そうだ。オレはウワサを確かめようとして、この旧校舎へ入ったんだ。・・・半年前に」


 失っていた記憶の欠片が、パズルのピースのように空いていた穴をふさいでいく。


「そしたら、突然床が抜けて、そのままオレは・・・」


 幽霊を探してたら、自分が幽霊になっちまうなんて・・・。バカだな、オレは。



 目頭が熱くなり、頬を一筋の涙が伝う。

 幽霊も、泣けるんだな・・・。

 

 

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