第9話 夜覇王2
翔たちに留置場を任せた晴人たち四人は取調室に向かっていた。途中途中現れる警察官を何の躊躇もなく殴り飛ばし踏みつけて行くが目的の場所までの道のりが遠い。
さらには取調室に着いたのはいいが、こちらが誰だかわかっているかの如く、その扉の前には八人の警察官がいた。
「四人ぼっちで何する気だ?」
「言わなくても分かるだろ?テメェらを倒して翔和を助ける」
その言葉を口火に戦いが始まった。
最初に動いたのは菜々子だった。堂々正面から突っ込む。切り込み隊長と呼ばれるに相応しい行動だ。それに反応した警察官が菜々子と対峙しようとするが菜々子の華麗な足さばきで床に倒れ込む。
他の警察官が菜々子に襲いかかるが貴史が割って入り、その警察官の顔面を殴り、戦闘不能にする。
圧倒的な速さと強さに驚く新米警察官がいることに逆にびっくりした晴人に対してそんなことを気にするほど繊細ではない咲里は容赦無く拳を腹に叩き込む。
さらに追撃を始める三人にその場を任せて晴人は取調室のドアを開けた。するとそこには身長一九〇cmはありそうな警察官が立っていた。その奥には翔和がいることを確認して目の前に立つ警察官の腹に拳を当てる。しかし痛がる様子もなくびくともしなかった。
「あれれ」
晴人は巨体に相応しい大きな手に首を捕まれ、外に投げ出された。
尻から着地した晴人は目の色を変え、弾む一瞬で足を前から後ろ入れ替え、体を下に向け、手足を床に着けて、閉まっていくドアに突っ込む。
寸でのところで部屋に入った晴人は勢いのまま巨体な警察官を後ろに押し飛ばす。机が大きく動き、椅子に座っていた翔和と警察官二人が同時に立ち上がる。
晴人は近くにいる方のパソコンに会話を書き込んでいた警察官に飛びつく。壁に背中をぶつけさせると同時に壁を蹴り、警察官を掴みながら一回転して今度は床に背中をぶつけた。
ギャッ、と断末魔に似た短い悲鳴をあげて動かなくなった。
その間に翔和は逃げ出すのに成功。その後を追うように晴人も出るが、残っていた警察官に服を掴まれた。
「逃がさねぇよ、夜覇王」
「離せよ。後は逃げるだけなんだからよ」
晴人は直上に飛ぶと同時に体を横に捻り、一回転して着地した。そのダイナミックな動きに警察官の手は服を離さざる得なくなった。
咲里たち三人は翔和の後ろを走り、その後ろを晴人が走り、その後ろを警察官が走る。しかし警察官の足は速く、晴人が最初の角を曲がるときに左肩を掴まれ、そのままの勢いで壁に打ちつけられた。
「いってぇな。おい」
晴人は肩を掴んでいる手の手首を右手で握りつぶす。しかしすぐに手を肩から離し、晴人の手を振り解く。
「晴人!大丈夫?」
咲里が足を止め、こちらを向いて不安そうに言った。
「大丈夫だ。先に行け」
咲里は晴人の言葉に頷き、回れ右をして走って行く。
「そんなこと言って平気か?夜覇王の頭君」
「テメェは自分の心配をしろ。さっさとかたをつけないとあいつらが心配するからな」
先に動いたのは晴人だった。右拳で顔を狙ったが躱され、逆に相手の右拳が晴人の顔を狙う。それを晴人は後ろに仰け反って躱し、そのままで床に手をつけ、上がってくる足で相手の顎を蹴る。
相手は後ろによろけ、晴人はそこを見逃さず、振り上げた足を元の場所に振り下げ、反動をつけ、今度こそ相手の顔に右拳を当てる。
相手は壁まで吹き飛び、壁に背中を強打する。
「初撃を躱したことは称賛する。だが所詮お前の実力はそんなもんだ。もっと自分を磨くのだな。若い警官さん」
晴人が帰ろうと後ろを向くと同時にパアーン、と銃声がすぐそこで聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます