○レストー夫人(三島芳治)

『この学校では

 毎年二年生が「レストー夫人」という演劇をする

 7つのクラスで同じ劇を違う台本にし

 7種類の「レストー夫人」を上演する


 なにかの実験なのかもしれない』

(本文より)


 とても静かに展開する群像劇。一つの劇、「レストー夫人」を完成させる為の生徒達のやり取りである。


 台詞や説明は少ない。が、そこに込められた意味やメッセージは強烈で、夢中になって何度も読んだ。短編書きとして、敗北感を刻みつけられた作品。

 何故こんなに魅力的なのか、上手く説明できない。劇的な展開で観客を引き込むのかと言われれば、そうではない。何というのか、ただそこにある物語。それが妙に鮮烈に映るのだ。

 絵は一歩間違えば破綻しそうな危うい絵。それがいい。「しょくいん室」などの表示が何とも子どもっぽさを含んでおり、とても柔らかい空気。その中に少年少女の生き様、というか精神の根幹部分の話という重い話がぽんと乗せられる。


 かなり人を選ぶとは思うが、はまる人はどはまりするはず。取り扱い注意だが、お勧めです。是非一読を。

 

 最後に。

 志野さんは素敵だ。

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