第2話「エンジェルタイプ」

このゲームのキャッチコピー(自作)

「美しき音楽の旋律に奏でられた短編恋愛小説」




高校時代、小夜子はお金がなかった。バイトもしてなかったので、お金のやりくりが厳しい。でも、面白い作品を遊びたい! という心の欲求は激しく強かった。そこで安い作品を大量に買おうという結論に至った。




中古ショップを巡ると、大体300~500円の低価格でもパソゲーは売られている。俗に言うワゴンセール品だ。値段自体は安いが、絵が物凄く下手……時代を感じる物が多く、8000~1万円のゲームと比べると格段に違う(当たり前だ)それでも小夜子好みの絵が多い。安いこともあって大量に購入した。これを友だちに言うと地雷原だとわかっているのに敢えて突っ込む馬鹿な人だと言われた。




「冬音ーtone」

「いもうとブルマ」

「はじめてのおるすばん」

「エンジェルタイプ」

「wind」




などなど、色々なソフトを購入しまくっていった。まあ、地雷原かもしれないが、筆者としては好きな絵だというのもある。個人的には今時の綺麗系の絵も好きだが、やや馴染めない部分もある。昔の元祖ギャルゲーな絵の方が大好きなのだ。女の子の目が大きい奴。ああいうのは堪らなく好物だ。




「冬音ーtone」も小夜子としては好きだが、以前これを貸した後輩に「金払ってこのソフトを買う価値はないです。相手がお金払うからプレイしてくれと言われたらプレイするレベルです!」という辛辣なコメントを頂いた。




さて、やや脱線したが、ここではその中でも筆者お気に入りである「エンジェルタイプ」をレビューしよう。







このソフトは元々違う会社が制作していたが、残念ながら倒産した為、minoriが制作を引き継いで発売したゲームだ。minoriは「ef - a fairy tale of the two.」や「「Wind -a breath of heart-」で有名なメーカーである。「君の名は」「天気の子」で有名な新海誠が以前、オープニングムービーを手掛けていたことでも知られているメーカー。


ゲーム毎に原画を変えていたり、背景描写の拘りといった、エロシーンよりもシナリオと美術を重視している作風が目立つ。序盤はライトだが後半シリアスな内容の学園青春が売りのメーカーだと個人的には思っている。しかし、残念ながら2019年に惜しまれつつも解散してしまった。





本作もminoriお得意の学園青春で現実世界が舞台。主人公は定時制の学校に通うという一風変わった設定だ。普通、一般生徒は全日制である。朝に学校に来て、夕方に帰る。だが、定時制は夕方に学校へ来て、夜に帰るという生活だ。昔のドラマでは定時制に通うのは不良の若者達というのが定番だったのだが、同級生たちの見た目も性格もごく普通。だが、定時制に通う辺り、訳ありだろう。ただ、サブキャラ達からそういった話題はなく、その部分は不明。




語られるのは、主人公が心の病気を背負っているということだ。そして、出会った女の子たちと友好を深めていくテキスト読み進みゲーム。女の子たちも訳ありな子達である。




シナリオはさほど捻りはなく、選択肢はあるものの、ほぼ一本道。難しい設定もないく、やや短めな印象。ただ、その分、感情・心情を丁寧に書いており、キャラクターや物語に強く引き込まれていく。立ち絵と風景もマッチしていて、水彩画みたいな描き方が良い。BGMと風景もその役割を遺憾無く発揮している。特にBGMが神だと思っている。美しいピアノの旋律と素晴らしい風景はぜひ注目して欲しい。




以前、どこかのサイトで「短編の恋愛小説みたいだ」というレビューがされていたが、まさにその通りだと思う。




どのキャラもきちんと個性があり、それがうるさくなく、すっと心に染み渡る人物ばかりなのが好印象だといえる。ただ面白い反面、やや短いのであっという間にクリアできてしまう。周回プレイにはさほど向かないのが難点。だが、プレイする価値はある。特にピアノのBGMは心に染み渡る。エロゲのBGMはたまに神曲なものがあったりする。minori作品は神曲が多く、それを聴かないでいるのは非常にもったいない。クリア後はそれを聞くためにプレイしてみてもいいかもしれない。




筆者は20代の頃、ニート時代を過ごしていました。正直、何もかもが嫌になって、親とも喧嘩しまくって、自殺も考えたりと荒れた時期だったが、その時期にこのゲームに出会い、全ルートクリアして「エンジェルタイプ」のあのピアノの旋律を聴いて、心が癒やされていた思い出があります。そういった意味でも忘れらない作品。






良い点

シナリオ、音楽



悪い点

シナリオが短すぎる所かな。

全体的にほぼ一本道なので周回プレイには向かない。

時間のある人だとすぐクリアできてしまう点。




ブランド  minori

発売日 2005-03-25

商品群 通常版 /PKG版/8424円

中古だと1000~2000円前後程度。




原画  八樹隼一郎

シナリオ 古我望

音楽  MANYO(Little Wing、六浦館)(BGM) , Ebi , 443 , FUDE_R

声優  鈴田美夜子(柚月 未憂) , 手塚まき(川原 砂緒) , 夢咲朱花(佐倉 詩希)

春乃いちご(川原 真名) , 浅野麻理亜(希崎 恵) , 中澤歩(中澤アユム)(設楽 章) , 星川未流来(古坂 有花)



データはErogameScape -エロゲー批評空間-より抜粋。


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