第12話

「ふん、身の程知らずのチビ鼠が!」


 扉が閉まるが早いか、蓉姐は私の肩から手を引っ込めて、吐き捨てた。


「チビ鼠」って、また私のこと?


 そうビクついた次の瞬間、床が持ち上がる様な感触が起きた。


「この部屋、どうなってるんです?」


 泣きそうになるのを必死で堪える。


 こんな、小さな箱みたいな部屋からいきなり人が出てきたり、床が急に持ち上がったり、もはや建物全体がお化け屋敷としか思えなかった。


「これはエレベーターよ」


 真っ赤な唇に猫の様な目の女が振り向いた。


「こいつに乗ると、階段なしで昇り降りできるの」


 急に、部屋全体がガタンと揺れて止まった。


「三階よ、降りましょう」


 蓉姐の言葉を待ちかねた様に、扉がまたゆっくり開いた。

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