東京の坂と橋

駅員3

道 それは生きとし生けるものの証


大自然が作り給いし山、渓を克服すべく坂道が出来、橋が架けられ、隧道が穿たれた


坂道を上り詰めると、峠が現れる


かつて峠を越えた向こうは、異国の地であり、未知の世界であった


道を進めば川があり、川の向こうもまた異国の地である

古より人々は、己が好奇心を満たすために、頂きを越え、逆巻く奔流を乗り越えてきた


江戸時代、本郷に見送り坂と見返り坂をはさんで、別れの橋があった


坂道を登った先にある頂きと、奔流に架かる橋は、人と人の出会いと別れを掌る神聖な場所だ


かつて峠には道祖神が祀られ、川には竜神が祀られた


ひとたび峻険な坂道を極めたものは、再び困難な坂に出会っても、苦にすることは無い


どんなに逆巻く奔流があったとしても、ひとたび橋が架けられると安全に渡れる


人生もまた同じ


坂道を越える労力を惜しむこと無かれ


逆巻く奔流に、橋を架ける努力を怠ること無かれ


私は、逆巻く奔流をも行き交う人々が安心して渡れる橋の礎となろう

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