苔豚のはきだめ

苔豚

紫苑

 死とは何か。生とは何か。この季節になると、いつも考える。夏の日差しも和らぎ、世間は、俗に言う秋に差し掛かっていた。


 いつもの散歩道、必ず私は公園に寄る。そこで、気の合った友人の顔を、いつも思い浮かべるのだ。


 あの日、何やら落ち込んでいた彼を元気付けようと、みんなでカラオケにでも行こうと話していた。その待ち合わせに選んだのが、この公園だった。別段ここに集まる意味はない。近所のカラオケボックスなんて、数えるほどしかないのだから、場所を指定して集まればいい。ただ、その日の気分で、この公園を集合場所に選んだのだ。このきれいな景色を眺めるのも、心を安らげるのに相応しいかと思ったのである。


 しかし結局、彼は来ることはなかった。主賓を欠いたカラオケは面白くないと夕暮れまで待ったが、結局彼が来ることはなかった。


 今すぐにでもいい。この景色を彼に見せたら何と言うか。少しは気が和らぐのか。そんな詮の無いことを考え、自嘲し、笑みを浮かべる。


 そして夕日を眺め、その公園を後にする。今日も、紫色の花が咲き乱れる、美しい夕景色だった。

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